第六章 王女

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 バハルはアメルとドロテアの方を見た。  「…………っ」  アメルは涙をぬぐい、呼吸の止まったドロテアを体から離した。  「……さない」  ドロテアをゆっくりと地面に下ろし、床に落ちた短剣をまた拾い、立ち上がる。彼女の右ももから血がまた溢れ出す。  「絶対、許さないから、あなた達。特にあなた、ミシュカ」  右手の短剣をミシュカの方角に刺す。  ミシュカが慌ててバハルの後ろに隠れた。  「た、頼んだわよ、用心棒」  「はぁ」  バハルが剣を構えた。  アメルがミシュカを睨む。  「この臆病者!自分で戦いなさい、」アメルは二人に向かって突進した。「ミシュカ!」  その叫び声が、ドロテアが最後に聞いたものだった。
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