第七章 ドラゴンと王女

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第七章 ドラゴンと王女

 私はあの時、死んだ。そして、私が今生きているのは、ドラゴンさんの魔法。でも、その魔法もまやかしで、永遠に続くものではないし、私が「自分は魔法にかけられている」と気づいた時点で、その効果は薄れてしまっているはずだ。  今までのドラゴンさんの変な行動の説明がついた。  そうだ、アメル。アメルティアは、あの後どうなったのだろう。  この場所がまだ役人に見つかっていないところを見ると、逃げられていない、というのが妥当な推測だ。あの時、焦って上手く見れていなかったが、アメルは恐らく片腕と片足を斬られていた。あのバハルとかいう男に勝てたわけがない。  「帰らないと」  立ち上がって、地上に伸びるはしごに向かって歩く。  「おい、待てこら」  手下に首根っこを掴まれ、「ごふぇ」という変な声が出る。  何故だろう、無性に腹が立つ。  「離して!」  手を振り払おうとするが、両腕が縛られていてどうしようもできない。  「帰らせてよ、時間がないの」  「いや、王城に戻られたらこっちが困るし、あなたの寿命があとどれくらいか知らないけど、ドラゴンの魔法にかけられてるだけで市場価値があるのよ、多分」  ミシュカが言った。手下が、私を地面に叩きつける。  痛い。  「違う、別に王城に行きたいわけじゃないわ。今更あんなところに用事なんてないもの。あなた達のことは誰にも言わないから、森に帰らせて」  身体中が痛くて痛くて、心臓が上手く作動していないのを感じる。今にも気絶してしまいそうだ。  でも、またここで死ぬのは嫌だ。寝そべった姿勢からどうにか起き上がる。  「お願い。どうせ私、もうそろそろ死ぬから商品になれないし」  ミシュカが疑わしそうな視線で私を見る。説得でここから逃げるのは、どうやら無理そうだ。でも、だからと言って物理的に逃げ切るような力も今の私には、きっとない。  せめて、もう一度、ドラゴンさんときちんと話をしてから居なくなりたい。  「嘘なんかつかない。本当よ。だから、少しでいいから、外に出してちょうだい」  「はいはい、わかったよ」ミシュカが男二人に向かって鍵を投げた。「すぐに売りたいから、そうね、四号室に入れといて」  「うっす」  「ほら、立って」  手下が私の縛られた腕を掴み、上に引っ張る。  「やめて」必死で抵抗しようとするが、痛みが強くて力が入らないし、思考がはっきりしない。「私、まだドラゴンさんに言わないといけないことがーー」  ドゴォン。  「なに!?」  ミシュカが上を見上げる。  「誰かが扉を破壊したんでしょうか?」頑丈そうな方の男がはしごに手をかけた。「ちょっと様子見てきます」  「う、うん。よろしく」  全員が眺める中、男ははしごを登って隠し扉を持ち上げ、どかした。  次の瞬間、男の顔の上に靴があった。と思うと男は残像の残りそうな速さで地面に落下した。  「え?」
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