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中が熱い。 チーフのものが、怖ろしいくらいに硬くなっている。 ぼくは、四つん這いになった脚が引きつれて、力も入らない。 喘ぎ声だけが、みっともなく高くなっていく。 「出すぞ」 ひと際低い声に、体中が震えた。 絶頂の瞬間、ぼくは声が出なかった。 息が止まって、電流が走りぬけて、体も心も真っ白になる。 光に包まれたみたいに真っ白に。 愛しているの言葉も吹き飛ぶくらいの眩しさで。 「う……」 と言う声と共に、ぼくより一瞬遅く、チーフが達する。 信じられないくらいの体の奥で、猛ったものが脈打っている。 だくだくと音がしそうだ。 「はー……、はー……」 いつになく乱れた呼吸のチーフが、背中を覆いながら崩れてきた。 もつれるように、二人でベッドに沈んだ。 ぐったりと動けないぼくの体を抱き寄せて、チーフが言う。 「おれのものになれよ。もうフラフラしてんじゃねぇぞ」 頷く力もないぼくは、チーフの深いキスに、舌を絡ませて応えた。 意識が遠のく。 マサトが。 サトルが。 真利先生が。 出会った男達が。 お母さんも。 お姉ちゃんも。 お父さんも。 遠くへ消えて行く。 ぼくはさなぎのように安心して丸くなる。 ちょっとだけ眠らせて。 そして目が覚めて、これが夢じゃなかったら、 もっとたくさんキスをして、 もっとたくさん愛を囁いて、 ぼくもいっぱい、愛しているって言わせて、 ね。 チーフ。
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