第二話.ラブラドライトと結婚式

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「ええ、開いております。何か気になられたものはございましたか?」  蒼井くんの言葉に、お客さんは一度立ち止まってあたりを見回してからうなずいた。 「あの、何か青いものでオススメってありますか? できれば身に着けられるもので」 「何か青いもの……ひょっとして『サムシングブルー』を、お探しですか?」  蒼井くんが言葉を発した瞬間、一瞬の沈黙がその場に漂った。一拍おいた後、お客さんは勢いよく頷く。 「……ええ、ええ。その通りです。よく分かりましたね。ちょっと今週末までに欲しくて」 「完全にただの僕の予想だったので、外してたらどうしようってすごくヒヤヒヤしました」 「あら。大正解です」  お客さんが右手を口元に当てて上品に笑う。その薬指に、グレイッシュな宝石の指輪が光っていることに私は気づいた。その宝石が、やや黒くすすけていることにも。 「それでしたら、こちらへ」  お客さんをアクセサリーコーナーへ案内する蒼井くんについていきながら、私は足元にすり寄ってくるティレニアを抱き上げる。 「更紗、お前『サムシングブルーってなんだろう』って顔してんな」  抱き上げた瞬間、ティレニアがひそひそ声で話しかけてくる。うぐ、と言葉に詰まった私はためらいながら素直に頷いた。
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