オープニング。放課後は硝子館で

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 店の中は予想よりも広かった。床はまるで高級ホテルのロビーみたいな、シックなワインレッドのふかふか絨毯。高い天井からは、シャンデリアがぶら下がっていた。  店内にはところ狭しと、ありとあらゆるガラスで出来た雑貨が溢れている。ひっくり返すと幻想的な雪が中でキラキラと瞬くスノードーム、ガラスでできたピーチツリー、煌めく銀のような模様を閉じ込めた水晶玉、はたまたはガラス細工の精巧な地球儀、ガラス細工のバラが蓋に繊細に埋め込まれたオルゴール、クリスタルガラスが内包されている万華鏡など、枚挙にいとまがない。  まさに私の理想の店なのだけれど、今の私はそれどころではなかった。こんな大好きなものに囲まれているのに。  でも、それは仕方ない。だって目の前に、予想外の人物がいるからだ。 「あ、蒼井くん⁉ なんで?」  私はあっけにとられて呟く。
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