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私はそのドアを見上げながら、ごくりと唾を飲み込んだ。なんだか落ち着かなくて、高校の制服から着替えてきたばかりの春物のグレーのニットワンピースの袖をぐっと握り、周りをそろりと見回してみる。
大丈夫、周りには人通りがない。
前々からこの個人的に気になるお店を見つけて気になっていたものの、何となく敷居が高そうなアンティーク調のドアに気が引けて。
今日こそはと気合を入れて、この前バイトのお金で買った五千円の新品のワンピースを下ろしてきたのだ。五千円は、高校二年生にとっては立派に高い。使い捨てコンタクト1ヶ月分と同じくらいの値段だ。
「うん、この後も買い物しなきゃだし。迷ってないで早く入る!」
自分に言い聞かせながら、ダークチョコレート色のアンティーク調のドアを思い切って開ける。
「うわあ、綺麗……!」
思わず小さく声を漏らし、きらきらとしたガラス細工の虹色の光の中に、私はしばし佇んだ。
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