オープニング。放課後は硝子館で

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オープニング。放課後は硝子館で

 昔から、透明感があってキラキラと輝くものが好きだった。  たとえばガラス細工、クリスタル、そして宝石みたいなもの。  ただ、手に入れたいとかそういうことじゃなくて。そこに在るのをじっと眺めているだけでも十分心が満たされる、そんな感覚で大好きだった。  まるで小さい子が、色とりどりのケーキが並ぶショーケースを、目を輝かせながらじっと眺めているみたいに。  だから、私が今いるこの店内は、まさに私にとっては理想そのものだった。 『硝子館 ヴェトロ・フェリーチェ』。それが、この店の名前。  ダークチョコレート色のドアを開ければ、そこに広がるのは夢みたいな世界。  曇り一つなく磨かれた大きな窓ガラスの傍には、細かく表面がカットされたクリスタルガラスのサンキャッチャーがいくつも並び、店内に虹色の小さな水たまりをそこかしこに作っている。私が足を踏み入れると、何色もの配色が映えるステンドガラスのライトスタンドが、まずはドア近くの棚で出迎えてくれた。 「うわあ、綺麗……!」
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