<7・Secret>

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「魔法は、大昔から存在している。けれど実際に処刑された者達の大半が、魔女でもなんでもない民間人達だった。魔法を使ったかもしれない、知識が少しでも豊富かもしれない、それだけで権力者達にとっては脅威であり排除すべき対象であったんだね。それほどまでに魔法というものは、ある種魅惑の果実であったというわけだ」 「……今でも、それを手に入れたいと思う人は多い、ということですか?」 「と、エルガート家に“魔法研究の許可”を与えているルインゼル修道会は考えている。その知識は、可能な限り秘匿されるべきともね。知る可能性のある人間そのものを限定しなければいけないんだ。……ここまで言えば何となく想像がつくだろう?」 「……はい」  なるほど、やっと話が繋がった。つまり、エルガート家に使用人が少ないのは、魔法の知識が外部に漏れる可能性を少しでも減らすため、ということらしい。確かに、使用人は掃除をするし、当然家人の自室にも踏みいる。その際、重要な研究書などが目に留まってしまうことも考えられるだろう。 「秘密を知る人間は最小限に留めないといけない。だから、本当に重要な区域は僕達が自ら掃除をするというわけだね。そもそも、貴族だって自分で掃除くらいしたって何も問題はないはずなんだから」  それはまあ、そうである。何となく、貴族はふんぞり返って雑事を全て使用人にブン投げるイメージはあるけれど、あくまでそれはロザリーの中の印象だろう。  そして彼らが自分で掃除をする分、使用人の普段は減る。だから最少人数でもなんとかなるということだ。まあ、その理屈はわかった。しかし。
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