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――新聞の投書にはこう書いてあったはずよね。前任がやめてしまったから、新しいメイドの求人を出したんだって。
まだ疑問は残っている。前任は何故やめてしまったのか、だ。
「君の前に勤めていた女性なのだけどね」
そして、ロザリーがまだ何を気になっているかわかったのだろう。こちらから再び問いかけるよりも前に、チャールズが口を開いた。
「亡くなったんだよ、実は」
「え」
「君が気にすると思っていたから言えなかったんだけれど。突然病で倒れて……それっきりだったんだ。とても苦しんで亡くなったものだから、僕らもショックが大きくて。しかも、まだまだ若い女性だった。日系イギリス人で、黒い髪が素敵でね。君とさほど変わらない年頃だったんだよ」
「!」
日系の、イギリス人。黒髪で、ロザリーに年が近い女性。
忘れかけていた恐怖が、足下から這い上がってきた。だってそうだろう。
――ゆ、夢の中の……あの人だ。
昨晩、夢の中で悶え苦しんで死んでいった女性。まさか本当に、実在したというのか。
「そ、それは本当に……病気、だったんですか?」
「病気だよ」
ロザリーの問いに、チャールズは再び――ぽっかりと開いた何も映さぬ瞳を向けて、首を傾げたのだ。
「どうしたの?なんで、そんなことを訊くのかな?」
何かある、というのか。本当にこの家には、何か恐ろしい秘密が。
ロザリーは反射的に首を振りながら、思ったのである。――あの書庫を、確認しに行かねばなるまい、と。
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