<2・Family>

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――けれど、基本的に植物について害をなすのは、植物を食べるような虫だったはず……蠅って、薔薇につくようなものだったかしら?  ロザリーは内心首を傾げていたが。あえてここで訊くようなことでもない、と口には出さなかった。蛆と何かを見間違えただけかもしれないし、何にせよ名家への嫉妬や妬みで悪い噂を流す者がいてもおかしくないことだろう。そういうものは、間にうけないに限るのだ。 「とても、優しくて素敵なお嬢様だと思います」  ゆえに、伝えるべきは別のことだ。 「私などでよければ、少しでもロザリー様の笑顔のため、尽力していただきますわ」 「本当に恩に着る。あ、我が家の紅茶はちょっとしたものなんだ。自家製のローズティーと、クッキー。どちらも香りと味に自信があってね、是非とも味わってみてほしい」 「あ、ありがとうございます。では」  嬉しそうなサディアスに勧められるまま、ロザリーは紅茶とクッキーを頂くことにした。このカップ、一体いくらするんだろう――とシンプルな白地に金色の細かな細工が入ったそれを見て思う。ピンクにも近い濃い赤い色のお茶は、口元に近づけると甘く優しい薔薇の香りがした。これが自家製とは、まさに恐れ入る。一口運び、紅茶の味や種類のまるで詳しくないロザリーにも別格だと理解できた。とにかく、渋みが少なく、すっと喉を通っていくのだ。それでいて芳醇な香りに濃厚な茶葉の味がたまらない。此処にきて、一体既に何度驚かされたことだろうか。  クッキーも、一口齧って、それはもうみっともないと思いつつもあっという間に平らげてしまったのである。恐らく薔薇だけでなく、ベリーも高いものを使って使用している。ほんのり香るベリーの香りと甘さ、それでいて紅茶によく合う軽い食感。貴族の方々とはかくも素晴らしい茶菓子を食べているものか――それとも、この家が格別なのか。感動のまま、ロザリーは声を上げるのだった。 「お、美味しいです!こんな美味しいお茶とクッキーは初めてです!」 「そんなに喜んで貰えるとは思わなかった!私としても本当に嬉しいぞ!あ、なんならもっとヨハンナに頼んで持ってきてもらおうか?」 「え、え!そ、それはちょっと、お仕事もあるし……」 「いいんだいいんだ。気にせずにそのまま待っていてくれたまえ」 「ええー!?」
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