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「ハヤセが起きたか見て来い」
と言う声と返事をする声が聞こえる。
彼女が心の中で起きてますよ、と返事をしたすぐ後、階段を駆け上る音が聞こえた。
訳の分からないこの状況、もう一度寝てしまおうか、ハヤセはそんな事を思った。だが眠るよりも早くに男の子が顔を出したのだ。
「あ! 起きてたんだね」
「……」
「俺はレニ。びっくりしたんだよ? ずっと寝てるんだから」
レニはハヤセのベッドに腰掛け彼女の顔を覗き込んだあと、ハヤセの姿を見て少し頬を赤くした。
胸元の開いたセクシーな黒のネグリジェ。だがそれを隠そうともしないハヤセの態度を見て、レニは引くに引けない。気にしていない体を装いハヤセに話しかける。
「んー、十七歳ってとこ?」
レニはまじまじとハヤセを見つめ首を傾げた。
全然惜しくない、私ってそんなに若く見えるのかな? とハヤセは心の中で呟き首を少し傾げた。
「……あなたは?」
「俺は十八歳。俺よりちょっと年下だよね?」
「そう思うなら……」
年下に年下と思われた……、嬉しいような複雑なような感情を抱いた。
三角座りをするように膝を立て、立てた膝の上に手を置く。ハヤセが身じろぎしたことで、彼女の揺れる胸は強調され、レニは気恥ずかしそうに顔を逸らした。それがどうにも可愛くてハヤセはレニを見て微笑んだ。
「あ」
「なに?」
「ハヤセさん笑った。兄さんもハヤセさんが困った顔してるの気になってたみたいだから。良かった。ハヤセさん笑ってくれて」
「……」
ハヤセはまた表情を消し、レニから目を逸らした。レニは気にすることなくハヤセの手を掴み、ニコリと笑った。
「ハヤセさん笑うと可愛い。すっごく可愛い」
頬を赤く染めながら真っ直ぐな言葉を紡ぐレニにハヤセはもう一度眠りに就きそうになった。
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