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3.
可愛らしいふんわりとしたチェックのスカートに、リボンタイの着いたブラウス。いかにも女子な服装。
「ああ、ハヤセよく似合っている」
「!?」
階段を降りた途端、突然の抱擁にハヤセは言葉もなく硬直した。
「君の為に選んだんだ。君を見て似合うと思った。私の見立てに狂いはなかったようだ」
紅潮した頬で彼はハヤセを見ていた。
「あの、あの……」
すっぽりと抱きしめられた腕の中は筋肉質で丈夫だった。父親や兄なら安心するだろう。だが知らない男性に、いくらイケメンでもいきなり抱きしめられれば怖い。
固い胸板を遠慮気味に押し返し、その顔を見上げた。彼は唇に弧を描き首を少しだけ傾げた。
「なにかな?」
「や、やめて、ください……」
語尾は消え入りそうな程小さな声だった。
「どうして?」
「どうしてって……。し、知らない人に、あの、いきなり抱きしめられても……困ります」
しどろもどろに返事をするハヤセ。
「知らなくないだろ? 君は私を待っていると誓ったじゃないか」
「人、違いです……」
人違いではない事は今のやり取りでなんとなく気が付いていた。名乗ってもいないのに、彼はハヤセの名前を知っていた。
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