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「……ハヤセ、まだ起きないのか? もう一度君にキスをしてもいいだろうか?」
「……やめ、て、ください」
「なんだ、起きていたのか」
頭を彼の膝からゆっくりと離し、ハヤセは目を擦った。
寝ぼけ眼で彼を見上げれば、彼はハヤセの頬に手を当てまたしても顔を近づけた。寝起きのハヤセにそれを避ける事は出来ない。
咄嗟の所でレニがハヤセの唇を自身の手で覆った事によってハヤセは難を逃れた。
「兄さん……!!」
「野暮な弟だ。君もそう思うだろう?」
呆れたようにハヤセに同意を求める彼に、冷汗をかきながらハヤセはレニを見て小さくお礼を述べた。
「あの、あなたは誰ですか?」
ハヤセは立ち上がりソファから少し距離を取った。
レニは眉を寄せ、彼は落胆したように肩を落とし額を押さえた。
「……」
「それにここは、あなた達のお家? 私自分の家に帰りたい」
「ハヤセ……! 待って。帰るなんて言わないでくれ! いきなり君にキスしたことは謝るから」
「そ、そうじゃなくて……。結婚とかいきなり言われても困ります。きっと人違いです。何かの手違いです。だって、私あなた達の事知りません」
「私は知っている! 君をずっと昔から! 手違いじゃないんだ。私は生涯君を愛すると決めているし、ウィルにだって了承は得ている。君がどうしても嫌なら仕方がないが……。君は私の事を何も知らないのだろう? いや、忘れているのか? このレニの事だって、もう一人次男がうちには居る。君が私ではなく弟を愛したって私は構わない。君と家族になれるんだから」
困ったような笑みを浮かべ彼は腕を広げハヤセに歩み寄った。
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