十二章 カンバスに想いを込めて

9/10
前へ
/105ページ
次へ
 ぐったりと力を抜いた樹里を抱きしめ、徹は横たわった。  ひくひくと痙攣する下半身が、可愛い。  時折びくんと跳ね上がる身体が、愛しい。  そうやって、樹里の余韻を見守りながら、徹は彼の髪を、肌を優しく撫でていた。  やがて、ようやく息の整った樹里が、話しかけて来た。 「どうして」 「ん?」 「どうして、避妊しなかったんですか?」  湊が生まれてからこっち、それを怠ったことのない徹なのに。 「うん、それはね……」  ちゅ、といたずらっぽく樹里にキスをし、徹は甘い表情だ。 「そろそろ二人目を、と思ってね。どうだ? 樹里は、賛成してくれるかな?」 「徹さん」  優秀な事業家の徹は、家族計画もバッチリというわけだ。  涙が、樹里の頬にこぼれた。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1370人が本棚に入れています
本棚に追加