第一章 運命の輪が回り始めた

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「トラジャひとつ」 「かしこまりました」  そして、苦みの強いコーヒーを、オーダーする。 (カッコいいな)  コーヒーを淹れる間、樹里はじっと熱い視線を彼に注ぐ。  時折、顔を上げた彼と、目が合うことがある。  そうすると、素敵な微笑みをくれるのだ。  注文のトラジャをテーブルに持って行くと、話しかけてくれることもあった。  学生?  住まいは?  バイト楽しい?  訊ねられるのは専ら樹里の方ばかりで、男の素性は解らなかった。  それでも樹里は、彼と話をしている間は最高に幸せだった。
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