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「トラジャひとつ」
「かしこまりました」
そして、苦みの強いコーヒーを、オーダーする。
(カッコいいな)
コーヒーを淹れる間、樹里はじっと熱い視線を彼に注ぐ。
時折、顔を上げた彼と、目が合うことがある。
そうすると、素敵な微笑みをくれるのだ。
注文のトラジャをテーブルに持って行くと、話しかけてくれることもあった。
学生?
住まいは?
バイト楽しい?
訊ねられるのは専ら樹里の方ばかりで、男の素性は解らなかった。
それでも樹里は、彼と話をしている間は最高に幸せだった。
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