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第九章 急転
長かった会議も、ようやく終了が近くなった。
「では、その他に何か報告がある者は?」
鉄血の綾瀬社長の硬質な声に一同は竦む思いだったが、一人の男が手を挙げた。
「社長、水原 樹里ですが」
「彼が、どうかしたか?」
実は、と部下は徹に切り出した。
「とんでもない掘り出し物です」
「どういうことだ?」
「水原の家を整理した時に、彼の描いた絵画が数点あったのですが、それを画商に見せましたら」
そうして示されたパワーポイントには、作品に高額の価値が付いていた。
全く無名の若者に、しかも個人宅に飾れる程度の小品に、数百万の値が付いている。
「100年に1度の天才だ、などと興奮しておりまして」
ぜひ今後も、彼の絵で取引させて欲しい、と願い出たという。
徹もこれには驚いた。
樹里が、まさか金の卵を産む鳥だったとは!
「解った、考えておこう。近日中に、答えを出す」
「よろしくお願いします」
手短に答えて会議を終え、徹は社長室へ戻った。
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