第九章 急転

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「先代の顔に免じて、今まで融資を続けていたのです。それが、解りませんか?」  それに、と徹は真顔になった。 「私は、先代ほど甘くはない」  見たものすべてを震え上がらせる、徹の一睨みだった。  まさしく、極道の眼。  店長は土下座したまま、床に突っ伏した。 「この土地は、いただいて行きます」  口調は丁寧だが、それは死刑宣告にも似た響きだった。  不機嫌なまま、徹は店を後にした。 「樹里を連れてきて、良かったな」  彼と昼食を共にすれば、この気分も晴れるだろう。  ほら、もう私を見つけて駆けてくる。  可愛い、樹里。  私の、樹里。  さあ、ここにおいで。  抱き留めてあげよう。 「綾瀬さん、危ない!」  何、と徹は歩みを止めた。  そこへ、樹里が渾身の力で抱きついて来た。 「綾瀬ぇ! この、ヤクザ者がぁあ!」  後ろから、店長が徹を追って走って来ていたのだ。  そして、その手には包丁が握られていた。
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