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天使のように美しい少年が涙を流す。
如何なる理由があろうと義父を優先してきた。
義父のためならなんでもする。それは少年にとって唯一の生きがいだった。
涙で重たい瞼を開けるとぼやけていた意識が現実を見る。
義父の隣はただひたすら甘く、切なくて、少年にとっての居場所だった。
出て行かなくてはいけない。
本当は義父に抱きついて、謝って、好きだと告げてしまいたい。
大好きな人と結ばれることを願わない人などいない。
少年は堪えきれない嗚咽を漏らさないように口元を華奢な手で覆う。
「……っ、ふ」
刹那――、溢れる雫を止めることが出来ない少年を今一度、柔らかく残酷なぬくもりが包み込む。
どうしてこんなにも近くに居るのに遠いのだろう。
ひどく優しいこの人を嫌いになれないのだろう。
「……これ以上、僕に優しくしないで」
張り裂けそうな胸の内を隠してまで傍に居たいのだろう。
このままでは必死に塞き止めていた想いが溢れきってしまう。
互いに踏み出す勇気を忘れた臆病者同士に正解はあるのだろうかーー……
目覚まし時計は午前2時を過ぎている。
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