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「春君は寝てくれていいから。起こしてくれてありがとう」
そう言うと洋一は玄関へと向かった。
気を遣ってくれたのはわかるが、その言葉に甘えようとは思えず、春は洋一の後を追いかけることにした。
日中は日差しが照って暖かいフローリングも朝方に裸足で歩くと冷たい。
玄関先では、春も見知った男と洋一が仁王立ちで睨みあっていた。
「非常識かつ迷惑というものをお前は考えたことがないのか?」
「非常識かつ迷惑って言葉は俺のためにあるからな……」
しかし、怒られている杉山和哉本人は聞く耳を全く持っていない。
「おいっ」
「あ、ヤッホー、天使ちゃん」
洋一の制止に耳を傾けず、春を「天使」と呼び、横を通りすぎた杉山は眼鏡をかけていて切れ長の瞳が知性的な印象を与える。
「杉山さん……」
だが今は頬が赤く、だいぶ酔っているのが春にもわかった。
「話は終わってない」
杉山が洋一を一瞥するが、ふらふらとソファまで歩き徐に寝転がった。
「天使ちゃんが来る前はお前だって飲み歩いていただろうが……」
「何年前の話をしているんだ」
自暴自棄な行動をとる杉山に洋一はもはや呆れている。
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