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「俺たちも寝室に戻ろっか」
春が何も答えず洋一へ手を伸ばすと、洋一は年齢の割には華奢で小さな春を一瞬だが抱きかかえた。
甘えすぎなのは自覚している。
それでも洋一の隣にいられる今は、傍で眠ろうと思った。
カーテンの隙間から覗く空はまだ薄暗い。
再び眠りについてからおそらく二時間程も経過していないだろう。
春が重い瞼をゆっくり開くと見慣れない整った横顔があった。杉山の瞳は何かを訴えるかのように潤んでいる。
優しい視線の先の洋一は規則正しい寝息をたてていた。
「あ、あの……」
空気が一瞬で止まった。声をかけてはいけなかったのだと気づいたが、遅かった。
杉山は何事もなかったように銀フレームの眼鏡を押し上げるとミネラルウォーターをおいしそうに飲み干す。
「あの、杉山さん……」
起き上がり沈黙を破ったのは春からだった。
「杉山さんも、洋一さんを好き、なんですか?」
あまりにもストレートに聞いてしまったので、思わず頬を赤らめて俯く。
「……俺も、ね」
そんな春の様子に杉山は堪え笑いが止まらない。
「テーブルに置いてあった奴だけど、飲む?」
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