神力が生み出す世界

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「その時はどうやって神力(しんりょく)を制御させたんだ。それをすればいいんじゃないのか」  それに対し、瞳を見つめ返すとため息をつく。 「ああ、他人の神力を引き出すという方法で、制御が得意な者が神力を引き受けるか、専用の道具にため込むかの二つになるが、その時は南宮大社(なんぐうたいしゃ)にある宝具(ほうぐ)とも言える宝刀、それを蓄神具(ちくしんぐ)とも呼ぶんだが、それを使って神力を引き抜いたそうだ」  そこまでの話しを聞いた私は、椅子に座りながら腕を組むと、一つの疑問を口にする。 「そもそも神力ってなんだ。この世界に来て何となくは分かるが、根本的に何なのかがわからない。人などが放つ特別な力みたいだが、人工的につくりだしてもいるようだし、違いが分からん」  穂乃華(ほのか)は私の言葉を耳にすると立ち上がり、右の掌を上に向けて前に差し出す。 「本来、生命力と精神力の均衡により発生するのが神力。これは生命体が持つ個体差が最も左右する」  そう言うとかざした掌に簡単な炎を生み出していく。 「こうして生み出した物は、物質変換した力になる。だが、人工的に作り出した物は物質変換されず、物体を動かす力に使用することになる。が、自然な物ではない上に不安定であり、作り出すと同時に荒御魂(あらみたま)が発生してしまう。元来、荒御魂は生命の負の力で自然発生している程度だったが、今はこっちのほうが問題になっているな」  広げた掌を握りしめて拳を作り、突き出すと同時に炎を消す。 「荒御魂はお前達のような祓い屋が祓っているんだろ。でも、多くの人工神力を生み出している所はどうやっているんだ」 「専用の圧縮装置があり小さな物質へと変換し固め、埋め立てたり、封印したりしている。それでも処理しきれなかったものや、あふれ出た物を専属の祓い屋が祓ったり、うちらのような祓い屋稼業が依頼されて受け持ったりしてる」  両腕を組み直し、再び座った穂乃華の言葉に言い知れぬ不安を感じ、思わず立ち上がる。 「ちょ、ちょっと待て、あふれ出た物を祓っているのは分かるが、固めて埋めたり封印って、危なくないかそれ」  現代日本でも、同じようなことが起こっているが、先送りされ放置されている。それは現代社会において問題視されながらも、解決されていない。まさにそれと同じ事が、この世界でも起こっているのでは無いかと感じた。 「あんた、察しが良いな。それについては極秘にされていて公開されていない。一部の者達が追求しているが、人工神力が生み出されたことで便利になったこの二百年、今の生活を疑問に思わないのが大半さ。正直、うちもそこは気になっているが、どうしようもないんだ」  足を組みながら腕組みした穂乃華は背もたれに倒れ込み、こちらを見上げ強い視線を送ってくる。 「どこの世界も同じか、結局臭い物には蓋をしろと……」 「ぶっちゃけ、今のうちらにとってはそこより、月夜のほうが最優先だ。話しを戻すが、あふれ出る神力を放力(ほうりき)するには、どっちも限界がある、柔な蓄神具じゃ壊れちまうし、許容量の少ない人間には直ぐに耐えきれなくなる。そもそも数居る神術士のなかでも、神力を引き抜く術を持たぬ者も少なくない」  穂乃華はそう言うと軽く天を仰ぎ、ため息をつく。 「今の月夜は髪からの放力と、神社にある宝具とも言える蓄神具で調整してなんとかしているにすぎない。ここ数十年は人工神力の恩恵もあり、一般家庭でも使える人工蓄神具が開発され、携帯蓄神具も出来ているが許容量がかなり小さく、月夜が使用すれば一瞬にして壊れちまう。神力の制御がうまくなれば、微量の放出も出来るようになるから、人工蓄神具にもためることは出来るんだがね」
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