四章

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「で、主様。どうする?」 「ツヴァイ、主語を省くな。」 「あの腹黒狸や。主様とあの優柔不断なもやし男をこっちの世界に召喚させたっちゅう、あの糞狸爺や。」 「どうもしない。『今のところは』、ね。」 「何故だ。……いや、お前自身がなにもしないと言うなら、それを聞くのも無意味なことか。」 「それより、早く戻ろう?」 「そうだね、樹姉が作ってくれた美味しい熊肉料理が待ってる。……おっと、獲物(しょくざい)の追加だよ、樹姉!」 唐突に琴把が足下の石を拾い、右前方目掛けて投げる。 「ぷぎぃ!?」 悲痛な悲鳴が響き渡り、重いものが倒れる音が木霊(こだま)する。 「うっわ、凄!こっから300mは離れてるよ?」 「相変わらずとんでもない制球力(コントロール)だ。」 「うん、やっぱ飛距離伸びてる。感覚がまだ修正しきれてないな。」 「ふむ。……琴把、重心が変わっているな?背筋もよく伸びている。」 「ん?ああ、至高神血(テオス・イコル)が調整してくれたからね。まさか、不意を突いたとはいえ半神相手に一撃入れられるとは思わなかった。」 「……半神だと?」 「カストロ、そしてヘラクレス。」 「……え、もしかしてギリシャ神話の?」 「うん。思った通り、滅茶苦茶強かったよ。難行を超えた武勇は偽りではなかった。ヘラクレスには勝てなかったし……。」 「半神、やはり頑丈なのか。」 「恐ろしくタフだったよ。カストロは脳を揺らしてやったのに、一分足らずで回復してたし。ヘラクレスは普通ならゲロ撒き散らす威力で腹を打ったのにちょっと痣になっただけだったよ。両腕ばっきばきにされたし。」 「なんだと?見せてみろ……ちゃんとくっついているじゃないか、驚かせるな。」
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