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序章
夕暮れの道を一人の少女が歩いている。
「~~~♪」
どこか上機嫌に鼻唄を歌うその少女はヘッドホンを着けている。そのコードはポケットに伸びており、どうやら音楽プレイヤーに繋がっているらしい。
その少女に、駆け寄る一つの影。
「こーとーはっ!?」
背中に目でも付いているかのように、飛び付こうとした影をかわして自然な動作で足を掛けてこかす。
倒れる影を一瞥すらせず、そのまま淡々と歩を進めようとする少女。
しかしその足首を、倒れた影が掴む。
「こ、こかしておいて放置は酷いんじゃないかな琴把………!」
掴まれたことを認識した少女が、端正な顔を露骨に歪め息を吐く。
「………はぁ。どちら様?知らない人とは無闇に関わるなと父からきつく言い含められているの。」
「え"。僕ら幼馴染だよね?」
「………私にそんなもの居ないけど?関わるなって言ってもしつこく寄ってくる他人ならいるよ。そんなことより、気持ち悪いから離してくれる?痛いんだけど。」
「離したら琴把そのまま逃げるでしょ?」
「………手首を踏み砕けば離れるかな。」
物騒な言葉を溢し、掴まれていない方の足で掴んでいる腕の手首を押さえるように踏みつける。
直後───倒れたままの影を中心に謎の幾何学的模様が広がる。
「え"………なにこれ?」
「ちっ…どうしてこうなるのよ!あんたなんかどうだっていい、さっさと離せ!」
踏みつける足に体重を掛けるも、掴んだ手は緩まない。
「待って、置いていかないで琴把!」
「うるさい、これ以上私を巻き込むな!」
言い争う間に模様が強い光を放ち────
直視できない輝きが収まったとき、そこには誰も居なかった。
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