四章

17/42
前へ
/136ページ
次へ
「…お世辞は、嬉しいけど…ボクみたいな、ちんちくりんが、べっぴん…うーん………」 「誉めてもなんもでないわよ?」 「お世辞ちゃうで。」 「お帰り、琴把ー………そっちの子は?っていうか、達兄さんは?」 「私だけ先に帰ってきた。この子は、ううん…この子神血(イコル)だよ。」 「本体から共有されとるで、よろしゅうな?樹姉さま。うちは神血弐號(イコル・ツヴァイテ)至高神血(テオス・イコル)の端末や。」 「………んー、まぁいいや。達兄さんならどうせ無傷だろうし、そのうち帰ってくるでしょ。とりあえず、そのデカブツとそっちの青白い小鬼はベルちゃんに預けて、こっちおいで?」 「…ん、帝王小鬼(カイザーゴブリン)はひとまずボクが預かるよ。悪鬼(ディアブロ)は…レフとグシオンが戻ってきたら運ばせよう。彼らにはいい罰だ。」 「わかった、お願いね。ベル。」 悪鬼の死体をその場に下ろし、帝王小鬼の死体をイザベルに手渡して、導かれるままにテーブルにつく。 「さて…あと、手を洗おうか。」 「ん。『水よ』『我が意に従い球となれ』。…石鹸ある?」 「あるよ、はいこれ。」 「ありがと。…。………なかなか落ちないな、沸かさないと駄目か『沸騰せよ』。」 乾いてこびりついた赤黒い血が剥がれ、煮える水球の中で踊る。 血を洗い流した手を振って水気を落とすと、無機質な目で琴把は樹を見た。 「ところで、私をテーブルの方に誘導したのはなんで?」 「はい、どうぞ。琴把を見送ってから調べてもらったんだけど、あたし火と水に適性があるみたいでさ?魔法を使って調理してみたら、思った以上にいい感じに仕上がったの。そんなわけで、魔熊(マギア・ウルスス)のステーキ、焼き加減はレアだけど…お好みで調整してね。」 首をかしげる琴把の前に、樹が木製のトレイに乗った熱々の鉄板を置く。その上に乗った、程よい焼き目がついた厚切りの肉。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加