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「そうともさ。ところで、琴把………」
「うん。七時の方向と十時の方向。距離は…35と50かな?」
「概ねそんなところだが、少し感知が甘いぞ。十一時の方向、70にも一人いる。」
「そうなの?………70か、50以上は確信持てないんだよね、未だに。」
「待って、何の話?」
「俺達、というより琴把に向けられた殺意の感知だ。殺気、とも言えるな。」
「達兄、どうする?十一時の方向のが早めのペースで寄ってきた。七時と十時もじわじわ詰めてきてる。」
「七時は俺が潰す。十時と十一時は任せた。まだだ、まだ動くなよ?」
達人が己の腰掛ける椅子の背凭れに手を掛ける。
目の前に並ぶカトラリーに、静かに琴把が手を伸ばす。
「依然接近中。」
「3、2、1…今だ!」
立ち上がりながら、修羅のごとき形相で座っていた椅子を投げる。
同時に琴把がフォークとナイフを連続で投げ、近づいてきていた整った身形の男達に突き刺した。
「がっ!?」
「か、ひゅー………」
「ちょっ、いきなり何してるの二人とも!?」
驚愕する樹を他所に、ナイフが刺さった男を殴り失神させる。
「随分足の速い追手だこと。」
「どういう意味だ、琴把?」
失神させた男の首元を探り、見つけたものを見て琴把が悪態を吐く。
聞き返す達人に、琴把が見つけたそれを見せた。
「これ、このペンダント。この裏に刻まれてる刻印、あの狸爺が着けてた指環に刻まれてたのと同じやつだ。」
「ほう…おい、起きろ。加減はしてやったんだ、死んだ振りは無意味だぞ。」
「………んー、とりあえず一人見せしめに仕留めとくか…いや、流石に不味い?」
「止血して足折って転がしとけ。話を聞ける相手は一人でも多い方がいい。」
「了解、達兄。」
兄の指示に従い、小枝を折るような気軽さで男達の足をへし折る。
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