四章

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「質問に答えろ!」 「かっかすんなよ、禿げるぜ?オレは朱羅(しゅら)、琴把の別人格(オルター・エゴ)だ。幼馴染自称する割には、なんもオレたちのことを知らないじゃねーの?オレたちは多重人格(マルチプル・パーソナリティ)、肉体は一人(ひとつ)だが精神は複数(ふたり)存在する。」 「そんな事、琴把は一言も………」 「そりゃお前、琴把はだ!聞かれてもないことを、ペラペラ喋るわけねぇだろうよ!」 笑いながら、両手を広げて誠司を煽る。 「お前にとってオレたちは幼馴染かも知らんが、オレたちにとって…少なくともオレにとっては、お前は今排除すべき敵でしかねぇ!(琴:私にとっては、可及的速やかに消えて欲しい邪魔者よ。)(イ:やとさ、裏主様。)(朱:めんどくせぇ、朱羅で良い。琴把よぉ、おもしれぇもん拾ってんじゃん?)(琴:使い方は解るんだろ、朱羅。もうそいつ相手にするのめんどいからお前に任せる。)(朱:引き受けたぁ!)表とオレの総意でもある、故にお前はここで死ねぇ!」 「ぐっ!?なんだ、この馬鹿力は………!?」 力任せの一撃で、手にもっていた剣を紙切れのごとく弾き飛ばす。あまりにも重い一撃に痺れた腕に、呆然と誠司が呻きを溢した。 「当たり前だろ?常人を遥かに上回る筋力を誇るオレたちが、肉体の損傷を完全に度外視して放つ一撃だ。お前ごときのその細腕で、受けきれるわけねぇだろうが。裏打法、破城鎚・百貫殺(ひゃっかんごろし)!」 物凄く自然な動作で誠司に体を密着させ、腹に肘、胸元に掌底を押し当てる。砲声のごとき音を響かせて地面を踏み締めた刹那、誠司の体が宙に浮く。 そのまま十メートルほど吹き飛んで、受け身もとれず無様に地面を転がった。 「がは、っ…ぁ………はぁっ………!」 水音と共に誠司の口から溢れた赤が地面を染める。 「感触的に胃は確実に潰れたろ。肋も半分は粉々のはずだ。攻撃遮断がなんだって?寸勁すら無効化できないくせに何言ってんだか。………仕舞いだ。裏打法………鎚腕・虚吼大炮(ここうたいほう)…ああ?………おいてめぇ、何の真似だぁ?」 〆の一撃を叩きつけようとした琴把の華奢な体が、背後から軽々と抱えあげられる。 「実の兄に向かって、なんたる言い種だ。」 「琴把!」 「達人に、樹だっけか。邪魔すんな。こいつはここで、確実に殺す。」
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