四章

28/42
前へ
/136ページ
次へ
「ふざけるな………湖精(エクス)、がああっ!?」 「させるわけねぇだろうが。安心しろ、外しはしたが折っちゃいねぇ。あの狸爺(たぬきじじい)に伝えとけ。『二度とオレたちに関わるな』ってね。」 ふらふらの状態で、誠司が立ち上がる。 剣を構えた瞬間に、柄頭を叩くことでその手から剣が弾き飛ばされる。立て続けに力任せに両肩を外され、凄まじい声で絶叫した。 「くっ………仕方ない、今日のところは退こう。」 「それが懸命だよ。両腕の使えない今、あんたじゃあたしたちに勝つ手はない。」 「………必ず、もう一度迎えに来る。」 「生憎と、次はないかもよ?」 もう一度迎えに来ると宣う誠司を、朱羅が冷たく嘲笑う。 「どういう…?」 「ぶっちゃけ、琴把が帰りたいと言った時点で、あたし達は帰る手段がある。」 「つまり、琴把が望めば、おまえの言う次は来ないと言うことだ。」 「もうしばらく、こっちにいるつもりだけどな。表が言うには『まだ対して見てないから、もう少し見てから決める』とよ。」 「全く………この強情は誰に似たんだかな。親父か、お袋か?どう思う、樹?」 「翳兄さんそっくり。あと、少しだけお母さんにも似てる。」 「………くぁぁ。ねむ…わり、達人…俺、疲れたから、寝る………あの程度で“疲れた”とはね。スタミナ落ちてんじゃない?」 「………案の定、裏が出ていたか。」 「道理で口が悪いと思ったよ。」 「まだ熊肉残ってるよね、樹姉?」 「たっぷりあるよ。」 誠司に一別すらくれず、琴把が踵を返す。 「主様?」 「ん?どした、ツヴァイ?」 「んにゃ、今主様の口調がおかしかったような………?」 「『至高神血(テオス・イコル)』から共有受けて。」 「うぃ。」 「………その求めるような手付きはなに?」 「だっこ。」 「あー…はいはい。」 琴把がツヴァイと呼んだ少女を抱き上げる。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加