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「ふざけるな………湖精、がああっ!?」
「させるわけねぇだろうが。安心しろ、外しはしたが折っちゃいねぇ。あの狸爺に伝えとけ。『二度とオレたちに関わるな』ってね。」
ふらふらの状態で、誠司が立ち上がる。
剣を構えた瞬間に、柄頭を叩くことでその手から剣が弾き飛ばされる。立て続けに力任せに両肩を外され、凄まじい声で絶叫した。
「くっ………仕方ない、今日のところは退こう。」
「それが懸命だよ。両腕の使えない今、あんたじゃあたしたちに勝つ手はない。」
「………必ず、もう一度迎えに来る。」
「生憎と、次はないかもよ?」
もう一度迎えに来ると宣う誠司を、朱羅が冷たく嘲笑う。
「どういう…?」
「ぶっちゃけ、琴把が帰りたいと言った時点で、あたし達は帰る手段がある。」
「つまり、琴把が望めば、おまえの言う次は来ないと言うことだ。」
「もうしばらく、こっちにいるつもりだけどな。表が言うには『まだ対して見てないから、もう少し見てから決める』とよ。」
「全く………この強情は誰に似たんだかな。親父か、お袋か?どう思う、樹?」
「翳兄さんそっくり。あと、少しだけお母さんにも似てる。」
「………くぁぁ。ねむ…わり、達人…俺、疲れたから、寝る………あの程度で“疲れた”とはね。スタミナ落ちてんじゃない?」
「………案の定、裏が出ていたか。」
「道理で口が悪いと思ったよ。」
「まだ熊肉残ってるよね、樹姉?」
「たっぷりあるよ。」
誠司に一別すらくれず、琴把が踵を返す。
「主様?」
「ん?どした、ツヴァイ?」
「んにゃ、今主様の口調がおかしかったような………?」
「『至高神血』から共有受けて。」
「うぃ。」
「………その求めるような手付きはなに?」
「だっこ。」
「あー…はいはい。」
琴把がツヴァイと呼んだ少女を抱き上げる。
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