四章

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「そっか。それはそれとして……片方くらい治してから行ってくれても良いだろうに、琴把は冷たいなぁ。」 「遠巻きに見ていましたが、随分嫌われているようなので、むしろ外されただけで済んだことに感謝すべきかと。」 「手厳しいな、ロゼさん。」 「敬称は不要です。私のことはただ“ロゼ”と。街に潜伏させていた刺客は既に部下に回収させました。我々も戻りましょう。」 「状態は?」 「酷い有り様ですね。それなりに紛れるのが巧いものを連れてきたはずですが、三人ともほぼ再起不能です。全く、あの役立たずども………。いえ、それは置いておきましょう。一先ず肩の処置を。」 「頼むよ…ぐっ………!」 どこからともなく現れた無表情の女性が、外された誠司の肩を填め治す。 「とりあえず、肩は治しました。それで………彼女は何と?」 「読唇術使えるって言ってなかった?」 「此方に口許が見える位置ではなかったので。それに、どちらにせよ遠すぎました。」 「そっか……『二度と私達に関わるな』、だって。」 「成る程……まぁ、あのお方が聞き入れるはずもなし。この国も終わりでしょうね。」 「……それは、何故?」 「ゼノン、ギルヴァ、アリア……騎士団の面々の中でも強力な人員でさえ話にならない英雄方が苦戦する超人です、彼女は。それに、御兄弟も人間離れして強い様子。」 「ああ、達人さんか。50人くらいの武装したヤクザに囲まれて、それを素手で一蹴したくらいだしなぁ。」 「ヤクザ……ああ、貴殿方がここに呼ばれる前に暮らしていた国の非合法の武装集団でしたか?」 「うん。琴把も一緒に居たらしいんだけど……何故かヤクザ側が壊滅したんだよね。おかしくない?この世界に来る前の話だからさ、魔武器なんてない状態だよ?」 「末恐ろしい話ですね。貴方が彼女に接触する前に、小鬼の群を殲滅する様子を見ていましたが、正しく鎧袖一触でした。」
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