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「琴把も素手だったのに無傷、いや本当ヤバい。でも、ひとつ解らないのが……なんで琴把はヤクザなんかに襲撃されたんだろう?」
「何か恨みを買うようなことをしていたのでは?」
「……そんなはず、って。言いきれたら良かったんだけど。……ひょっとしたら、程度だから、口にするのも憚られるけど。案外、僕のせいなのかも知れない。」
「……と言いますと?」
「僕はさ。誰にでも出来るだけ優しくするようにしてきた。そうすれば、好かれこそすれど嫌われることはないと思ってたから。僕は、隣に琴把が居てくれさえすれば他はどうでも良かった。……でもさ、周りの皆に向けていた優しさが、悪意になってその隣に居てほしい人に向かっていたんだ。」
「…………貴方の周りには、救えない者ばかりが居たのですね。」
「そうだね、そうみたいだ。優しさが裏目に出て、結局大切な人を傷つけてたんだから、馬鹿らしいよね。」
「過去はいくら振り返っても変えることは出来ません。どんな失敗も、どんな古傷も、抱えて進むしかないのです。」
「……そうだね。」
「……あまり気負われませんように。…………それより、肩の具合は如何ですか。」
「……暫く、剣は振れなさそうだ。」
「左様ですか。では、一度王城に戻り腕利きの治癒術師に見せましょう。性根はあれですが、腕は確かです。」
「おい、どういう意味だ、ロゼ?僕はただあらゆる病を治すことに全力を尽くしているだけだ。……おや、お前……肩だな?強引に外されたと見た。見せてみろ……やはり、バンカート損傷を起こしている。両肩関節脱臼……いったい何をしたらそうなるんだ?」
「アスクレピオス様、その辺で。」
「それもそうだな。帰るぞ、勇者。持ち合わせている道具では間に合わせの処置しか出来ん。僕は医師として半端な処置など許容できない。」
唐突に現れた、両腕に蛇の刺青を入れた青年が捲し立てるようにつらつらと喋る。
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