四章

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「うん、だってもう治したし。」 「え、治、はぁっ!?」 「至高神血(テオス・イコル)で強引にね。」 「うちの本性は細胞よりも小さい無数のロボットの集合体や。粉砕骨折治すくらい、わけないで。」 「琴把。」 「ん?……え、どしたの樹姉?いつになく怖い顔してるけど」 「後で説教ね。」 「……はい。」 目が笑ってない笑顔を向けられて、琴把が縮こまる。 「そんなん大袈裟やて、姉やん。うちがおる限り絶対に主様は死なん。」 「ねぇ、イコルちゃん。知ってる?死なない=無茶して良い、なんて……この等式は成り立たないんだよ?」 「ひぃぃ……!」 「全く……俺もしょっちゅう怪我をするが、粉砕骨折なんぞなったことないぞ?」 「剣も矢も棍棒も通さない皮膚を持つ獅子を絞め殺すことが出来る超人とやりあって生きてるだけ上等だよ?腕両方折られた直後に神血に止められた。」 「よもや他に何か無茶をしたんじゃあるまいな?」 「んー……鉄扉をパンチでひしゃげさせたり、窓から身投げせざるをえなくなったくらい?あと、不可抗力とはいえ二人殺しちゃった。」 「……遅かった、か。」 「何故殺した?」 「何も悪いことしてないのに捕まえられそうになったから、追っ手を無力化しようとしたときに加減を間違えて。」 「ふむ……お前は、以前お前を襲ったピットブルを、素手で叩き殺したことがあったな。それを切っ掛けに、俺はお前に有り余る力とのつきあい方を教えたはずだ。……いや、過ぎたことをあれこれ言っても仕方あるまい。いいか琴把、必要な場合以外は決して急所を狙うな。とくに、蹴りは対人においては部位破壊に用いる場合以外禁止だ。今のお前の膂力であれば、人体など豆腐より脆い。大腿骨以外の骨など、朽ちた小枝のようなものだろう。大腿骨でさえ、普通の枝ほどのものでしかあるまい。常人では、お前に叩かれただけで死ぬだろう。これ以上、無用な殺生は許さん。」 「過剰防衛がそのまま殺人罪になりかねないなぁ……。うん、気を付けるよ達兄。」
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