兆し

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兆し

一人の少女がベンチに腰掛け呟いた。 "どうして自分はこんなに畏怖嫌厭される存在なのだろう"とため息混じりに零した。 「どうしたんだい?」 俯いていた少女はその声に驚き弾かれたように顔を上げると目の前に見知らぬ少女が立っていた。 「あっち行って」 素っ気なく発した自分の意思とは添わない勝手な言葉にため息が漏れる。 「畏怖嫌厭されてもいいじゃないか」 「え?」 聞こえていたのかと自分の失態を突きつけられた少女は彼女の目を見れなくなった。 「僕だってそんなもんだよ」 苦笑いする少女の声色は自分と違って清々しく思えた。迷いなどない調子で。 「どうしてそんなことが言えるの」 「だって、畏怖嫌厭されるだけで孤独とは違うじゃないか」 当たり前のように言われて何かに気がつく自分がいた。 「畏怖嫌厭って言葉は悪いようで新しい出会いにも導いてくれる言葉でもあるよ。人は1人じゃ生きれない。嫌われる自分にも変わり者は寄ってくることがある。その人達は意外といい人の事も多いのさ」 胸を張って言うその少女がその時偉大に思えた。 「だから似た者同士、友達になろうよ」 差し出された手を握り返しながら「変わり者だね」と言った。
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