15歳の母

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<6>  夕暮れが差し迫り、空に一番星が瞬き始めた頃。  三人が寝息を立てる向日葵と共に民宿へ戻ると、彼等を迎えに来たハイヤーが数台、道路を占拠して長い車列を作っていた。  「今日は一旦帰りましょう。・・蓮君の腕の中の向日葵ちゃんを、寝不足にさせてしまったら可哀相だものね」  藍川は来人にそう告げ、自身はさっさと車に乗り込んでしまった。  来人は先程まで噤んでいた口を漸く開いた。  蓮の方に向き直り、じっと目を見つめて。  「俺はお前を諦め切れない。今のお前にとって、きっと俺は憎しみの対象でしか無いのだとしても。・・・蓮、俺はお前に一生かけて償うつもりだ」  それだけを告げると、来人も黙って車に乗り込んだ。  車列はそのまま、走り去って行ってしまった。  それをじっと見送る様に立ち竦む蓮の元に、親葉と柊子がそっと歩み寄った。  「・・・蓮、大丈夫?」  「身体、辛くないか?」  心配そうに蓮の顔を覗き込む二人に配慮してか、蓮は精一杯の笑顔を作ろうとして無理矢理笑った。  ばれぬ様、今まで培った演技をフルに詰め込んで。  「大丈夫です。社長の藍川さん、すごくいい人でしたから。彼女、向日葵を抱っこして優しくあやしてくれたんですよ」  「まあ!子供好きには見えなかったけれど」  「・・何話したんだ、あの人と」  「大したことじゃないよ、大したことじゃ、ない・・・・」  必死に笑顔を作る蓮の頬を、ぼろぼろ大粒の涙が零れ、伝った。  精一杯繕って来た心の壁が、先程の出来事を思い出したせいで簡単に崩れ落ちてしまった。  涙は、堰を切ったように溢れ出て、もう止まらない。  「どうしたの、蓮」  柊子が震える蓮の肩をそっと抱いた。  あの人の、悲し気な笑顔が蘇って来る。  (僕は、僕は・・・・!)  「・・・僕、あの人の手を払い除けてしまったんです。大好きだったのに・・あの人を、愛しているのに・・身体が・・・あの人を、拒絶するんです・・・・・」  それだけを絞り出すように小さく呟くと、蓮はその場に蹲ってしまった。  「・・・・蓮、やっぱり貴方、あの男を・・・・」  柊子はしゃがみ込んで、蓮の背を優しくさすった。  「ううっ・・う・・うっ・・・・」    その晩蓮は、向日葵を寝かしつけてもなかなか布団に入ろうとはしなかった。  ちぎれ雲に隠れてぼんやり霞む朧月を、縁台でじっと眺めながら・・静かに物思いに耽っていた。  その頬に、冷たいジュースが押し付けられた。  「うわ!冷た・・・・」  「な~に考えてんのよ、子供はもう寝る時間よ」  と脇から柊子が。  「俺ら仲良し親子の一服タイムを邪魔すんじゃねーよ。さっさと寝ろ」  と逆の脇から親葉が。  親葉の手には、近所の酒屋のビニール袋が握られており、その袋の中にはいつもの銘柄のビールがぎっしり入っていた。  「ああ、ごめんなさい。・・もうそんな時間?」  慌てて立ち上がろうとする蓮を、柊子が腕を掴んで引き留めた。  「仕方無い、今日は混ぜてあげる」  「おう、蓮。お前何飲む?」  「・・・・・ビール」  口走った瞬間、親葉にグーで頭を思い切りゴリゴリされた。  「ガキがナマ言ってんじゃねえ!」  「痛い痛い、ごめんなさい!」  「あはは!そんだけ言えれば上出来。でも、貴方はコーラで我慢ね」  柊子は蓮にコーラを差し出した。  冷蔵庫で冷やしていたのだろうか、コーラはキンキンに冷えていた。  「有難うございます、いただきます」  三人は縁台に座りなおすと、ビールとコーラで乾杯した。  そしてそれを三人で一気にあおった。  「ぷはぁ~うめー!」  「ああ、最ッ高!」  「ホント、美味しい!」  しばらく三人は、雲から解放されきらきらと幻想的な輝きを放つ、三日月をじっと見つめた。  その沈黙を、柊子の言葉が破る。  「・・明日からまた忙しくなるわ~。今度は親葉、アンタも手伝うのよ」  「何でだよ!俺は仕事が有るだろ。蓮に頼みゃいいじゃねえか」  食って掛かる親葉の頭を、柊子が脇に抱えていた本で叩いた。  「痛ってえ!何しやがる!!」  「蓮は仕事よ。ほら、これ」  親葉の頭を叩いた本を、蓮に差し出した。  その本は、大手映画配給会社の新作映画の台本だった。  「・・これはどういう事、柊子さん?」  蓮はその本を手に取る事無く、柊子を見つめた。  「大熊さん・・あなたの事務所の社長さんが、次の仕事だって仰って置いて行ったのよ」  蓮はやや興奮気味に否定した。  「いやだ。僕には学校も子育てもあるんだ、出来ないよ!」  柊子は一つ溜息を付くと、蓮に台本を押し付けた。  「なら、貴方が断りなさい。明日もう一度、貴方の気持ちを聞きに来るそうよ」  「・・・・・・そうですか、わかりました」  蓮は渋々台本を受け取った。  その台本のタイトルを、既にビール二本目を空にした、ほろ酔い親葉がじっと覗き込んだ。  「どれどれ、タイトルは・・「そんな君に、何度も恋する」何だ、青臭い匂いのぷんぷんする甘酸っぱそ~なタイトルだな・・・」  「主演は来栖来人。貴方はヒロインの幼馴染、来栖来人とは敵役よ」  その一言に、蓮が俯いた。  「すげえな!準主役じゃねえか」  「ホント、社長さんも驚いてたわ。ブランクを吹き飛ばす「大抜擢だ!」ってね」  「・・・でも、僕は」  否定の言葉を吐こうとする蓮に、かぶせる様に柊子がつぶやく。  「貴方はやるべきよ、蓮。この先向日葵ちゃん抱えて、どうやって生きてくつもり」  「それは・・この民宿を・・・・」  咄嗟に付いた嘘を、柊子はバッサリ切り捨て、否定する。  「嘘おっしゃい、貴方は未だ芸能界に未練がある。・・・本当はいつか戻るつもりだったんでしょ?だとするなら、それは”いつか”じゃなくて、今よ!」  「でも、僕はもう一人じゃ無い・・・」  「それはどの仕事も一緒よ。貴方は子供のころからやっているから、芸能のお仕事に慣れている。子持ちの貴方を支えてくれる人も、あなたが頑張っていれば必ず居るわ。でもね、民宿の仕事は子供を抱えてやれる仕事ではないわ。貴方が思っている以上に経営は大変だし、学校に通って、子供を抱えてなんてとても無理。それに・・」  「・・・ああ、お前はこんな田舎に引っ込んだから忘れてるけどな。お前の知名度と人気、今でも半端じゃねえぞ」  「ええ、貴方には言わなかったけれど・・。民宿の宿泊客の何割かは、貴方目当てに来てるのよ。何度も削除依頼を掛けているけど、度々あなたの盗撮写真が投稿されてるの。・・向日葵と一緒の所もね」  「・・・・そんな」  蓮の顔色があからさまに変わった。  「それと、来栖来人の事もよ。彼が向日葵の父親だと云うのなら、ずっと逃げ回っている訳にもいかないでしょう?どこかで折り合いをつけないと。・・丁度いいチャンスじゃない。仕事だと割り切って、彼にも仕事にもぶつかってごらんなさい。決して、がっかりするような結果にはならないと思うから」  「おう。それに、もし失敗してもこの民宿がある。お前が頑張ってる間は・・・仕方無え、俺も手伝ってお前の帰る場所を死守してやる」  「二人共・・・・・」  蓮が涙目で二人をじっと見つめると、二人は黙って頷いた。  そして柊子が、二人の背中を思い切り引っ叩いた。  その余りの痛さに、二人はたまらず悶絶する。  「痛ってえ!だからお袋のは痛えんだって!この馬鹿力!!」  「げほっ・・・、柊子さん、痛いです・・・・」  柊子は元気に腕をブンブン振り回している。  「さあ、明日から忙しいわよ!その映画、明日から撮影始まるらしいんだけどさ。映画のスタッフがこの民宿貸し切りにしちゃったから、撮影終わるまで大変なのよ~。  ああ~、親葉が助けてくれるんなら助かるわぁ~」  その言葉に親葉が絶叫した。  「なんだと、そんなの聞いてねえ!」  「今言った」  「そんなの断っちまえよ!俺だって暇じゃねえんだ!!」  柊子がもう一度、親葉の背中を思い切り叩いた。  「いってえ・・だから!痛いって!!」  「うるっさい、さっき蓮に言った「経営大変」って、あれマジなのよ。どうせもうすぐ学校は夏休みでしょ、つべこべ言わないで手伝いなさい!蓼科先生には私が頼んでおくから」  柊子はビールをもう一本開け、一気飲みした。  「畜生、外堀からじわじわ攻めてきやがって」  親葉もヤケクソでビールをもう一本開けてがぶ飲みした。  「・・・そうだよね、逃げてばかりじゃ駄目なんだ。・・・向日葵の為にも」  小さく呟くと、蓮も残りのコーラをがぶ飲みし、すっくと立ちあがった。  「よ~し、頑張るぞ!」  「よく言った、いいぞ蓮!頑張れ蓮!」  ほろ酔いの柊子が合いの手を入れる。  「チクショー、俺も頑張るぜ!・・スタッフに綺麗なオネーチャンが居たら、必ず紹介しろ。分かったな、蓮」  「了解。親葉好みの巨乳で童顔の美女ね」  二人はげんこつを合わせて、ニヤリと悪戯っぽく微笑んだ。  (このまま無事、何事も無ければいいんだけれどね・・・)  柊子は満天の星空をじっと見つめた。  「・・・あ、流れ星」  流星が、きらりきらりと幾粒も輝きながら西の空に吸い込まれていった。    その晩、蓮の連れ込まれた高級旅館の一室では、部屋を閉め切った状態で二人、来人と藍川が深夜まで話し合っていた。  「あの様子じゃ、見込みは無いわよ来人。・・あんなに強く、彼にトラウマが残っていてはね・・・」  「・・・仕方無い。俺はそれだけの事をしたんだ、アイツに」  藍川はカーテンの隙間から、ちらりと外を覗いた。  そして大きな溜息を一つ吐いた。  「・・芸能記者が貴方の周りを嗅ぎまわってるわ。この映画、放送されれば彼と彼の娘にも、周囲の目が向く事になるでしょう。「この子の父親は誰?」ってね。彼も、彼の親族も決して話しはしないでしょうけれど・・」  「・・確かにアイツ、口は堅そうだった。だが・・周りはそうじゃない」  来人の云う”アイツ”は、恐らく親葉の事だろう。  来人は壁にもたれ、腕組みしつつじっと藍川を見つめる。  だがその瞳に、藍川は映っていない。  来人は先程の蓮の狼狽と、涙を思い出していた。  そんな来人を、藍川は目をそらさずに見つめ続けた。  「・・・もう一度教えて、来人。あの時の事を」  藍川は虚空を見つめる来人に、そう頼んだ。  来人の瞳がその言葉に反応し、藍川をじっと見つめた。  だが・・その眉間には微妙にしわが寄っている。  「・・・話したくない、と言ったら?」  「答えは”NO”よ。私は貴方の事務所の社長、守る物は貴方だけではないわ。私には知る権利がある、・・・教えて」  来人は暫く俯き、大きな溜息を吐くと・・ようやく口を開いた。  「・・・・あれは、去年の2月初めの頃だ。季節外れの肝試し企画、3月に放送するドッキリ特番の収録で、郊外の山に向かったんだが・・」  「山でドッキリ?」  「いや、その山奥に廃病院と療養施設の廃墟が有って。そこで俺たちが肝試しをして、最後にニューシングルの宣伝をするって企画だった」  「・・あの当時は未だデビューして一年足らずで、今ほど知名度も人気も無かったものね。確かにそういう体当たり企画が多かったわ」  「ああ。その時のコーナー司会が蓮だった。・・アイツは俺達より人気があって知名度も高かった。それでいて、頭も良くて場も仕切れるから、大御所の芸人やタレントなんかが良くアシスタントで使ってた。俺達も自然とアイツとの共演が多くて、結構仲良くやっていた。・・・あの時までは」  「貴方達なんかより、余程仕事もこなしてたしね。ウチでも、「あの子がウチのタレントだったのなら!」と悔しがるスタッフが多かったもの。・・かく言う私も、その一人よ」  「フッ・・・。そのロケ、ADのミスで地権者と直前で揉めちまってさ。夜中だってのに、スタッフが全員出払っちまって。俺たちグループのメンバー五人と、蓮だけが深夜のロケバスに取り残されちまった」  「マネジャーは?あの子にも付いていたんでしょう?」  「俺たちはマネジャーが付く程仕事は未だ無かったし。マネジャー代わりのあいつの母親、”生理がきつい”とか言って、その日は付いて来なかったんだ。そもそも、アイツ一人で何でもこなしちまうし。母親も、「蓮なら大丈夫」って思ってたんじゃねえのかな」  「そうは言っても彼、当時14歳位でしょ。そもそもそんな深夜まで働かせちゃまずいわよね?」  「本当は9時ギリには終わる筈のロケだったんだ。それが、現場での事前打ち合わせで、地権者が直前に暴れ出して、口答えしたスタッフを突き飛ばしたらしくて。山肌転げ落ちたスタッフ探し回るのに総出で、俺達どころじゃ無かったんだ。制作側も予算ギリで制作してるから、割ける人員にも限界あるしな」  「・・・・・・・」  「俺達は仕方無いから、蓮とトランプやゲームして遊んで待機していた。そんな時、急に蓮の様子がおかしくなって・・・」  「それまで、そんな事は無かったのよね?」  「ああ、アイツは俺達に「未だ発情期が来ない、あんまり遅いから母親が心配している」と言っていた。それで何度か、病院に掛かっていたとも言ってた」  「外へ、連絡を取ってどうにかしようとはしなかったの?それに彼、避妊薬とか抑制剤とか持ってなっかたの?あの齢なら飲んでて当然よ」  「あんな山奥じゃ、携帯の電波は当然アウト。スタッフとも連絡付かなくて。・・蓮の薬は、具合悪くて先に帰った母親が、全部持って行っちまったらしくて。本人も最初は笑って「今まで必要なかったし、大丈夫」とか言ってたけどな」  「・・・・・・・」  「その抑制剤や中和剤の入ったカバンが無いと気づいて、ロケバス中を探し回ってたら・・・・直後に蓮が急変して。俺達も・・その時の記憶は朧気、俺が覚えてるのは・・生まれてこのかた嗅いだ事の無い位の、濃くて・・・恐ろしく強いフェロモンの”香り”。あれを嗅いで、五人共記憶と理性が吹っ飛んだ。後は・・・・俺たちが蓮を囲んで押さえつけ、泣いて絶叫するアイツを組み敷いて・・・ゴメンと、すまない、と言いながら代わる代わるに、アイツを・・・・・・・」  来人はそれきり、口元を手で押さえ、顔を伏せてしまった。  ・・肩が僅かに震えていた。  藍川は大きく溜息を吐き、ポケットから手帳を取り出し、開いた。  「・・・あの当時の、弁護士が書き記したメモには、スタッフが下山して来て、ロケバスの扉を開けるまで”密室”だったと」  「流石に熊はいないだろうが、野犬が危ないからと常に閉めるように指示があったんだ。咄嗟に窓を開けようともしたんだが、すぐ近くで野犬が遠吠えしてて・・結局開けられなかった」  「彼の診断書では、かなり酷い打撲が数か所。陰部の裂傷が特に酷かった、と書いてあるわ。・・・あとは、首筋とうなじに酷い咬み跡が数か所。後日、妊娠も判明した」  「・・・・アイツを最初に抱いたのは俺だ。蓮が抱いていたあの子は、俺の子だ」  「あの子の遺伝子を入手し検査に回して調査した結果、貴方との遺伝子の合致率、99.9%。・・・間違いないわね」  来人は大きく深呼吸するかのように溜息を一つ吐き、居住まいを正し、藍川に深々と頭を下げた。  「俺は、アイツとアイツの子供の為に責任を取りたい。・・・社長、頼む!」  藍川は髪を掻き上げ、大きな溜息を吐き、カーテンの隙間から僅かに覗く景色をじっと見つめた。  「・・・貴方に頭を下げられなくても、私は私の仕事をするわ。けれど、それが貴方 の望む方向に行かないかも知れない。・・貴方に、それが耐えられて?」  来人は藍川に頭を下げたまま、拳をぐっと握り締めた。  「分かっている、俺達は事務所の「商品」なのだから」  そんな来人の態度に、藍川は目を細めた。  (この一件で、成長したわね来人)  藍川は、テーブルに置いておいた台本を手に取り、来人に手渡した。  「・・先ずは、明日からクランクインする映画の撮影。あれを全力でこなしなさい。来年春の劇場を席巻する事が出来れば更なるチャンスに繋がるわ。・・主役の貴方の敵役に、あの子・・蓮君を起用しておいたわ。天才子役の名を欲しいままにしていた彼に、精々飲まれない様に覚悟なさい」  「・・・死ぬ気で食らいつきます」  「上等」  藍川はニコリと微笑むと、来人の背を軽くポンポン叩き、部屋を出て行った。  扉の閉まる音で頭をゆっくり上げた来人は、そのままベッドに倒れ込む様に寝転んだ。  (・・・此処に、蓮が寝ていた・・・・)  重ねた・・・柔らかい、唇の感触。  抱き上げた身体は、以前よりやや軽くなっていた。  その身体からは・・赤ん坊の物だろうか、ほんのりとミルクの香りがした。  長い睫毛が、ゆっくりと開かれると・・・・これ以上無い位、はっきりと拒絶された。  涙と絶叫、恐怖におののき嗚咽する蓮は・・・・  (きっと、俺を鬼畜だと思ってるんだろうな)  そう思わずにはいられない、そんな顔で睨みつけられた。  だが、どんな理由があったにせよ、彼をあそこまで追い込み、傷付けたのは自分なのだ。  最初は、したたかで生意気だけれど憎めない、可愛い弟分のような存在だった。  仕事での共演を重ね、プライベートでも度々会う内に、彼の真っ直ぐな人柄と包み込むような優しさに、純粋で少年らしい愛らしい仕草に、心を強く惹かれる様になった。  次第に、周囲に隠れて手を握り、身体を抱き寄せ、何度も唇を重ねるまでになっていた。  だが、彼は未だ14歳。  それ以上は・・望む事すら考えられなかった。  ・・・・・それなのに。  ・・・あのとき。  狂乱の時間は、スタッフが帰って来る直前・・・夜が白み始めるまで数時間続いた。  激しく凌辱され、嬲られ、蓮は想像を絶する痛みと苦痛に何度も腕の中で絶叫し、失神した。  裂けた陰部からは、自分達が代わる代わる蓮の中に何度も注ぎ込んだ物が、血泡と共に何度も糸を引いて滴り落ちた。  それでも、止められなかった。  (アイツの憎しみは・・・欲望に流されてしまった俺への”罰”だ)  もう、何度自分を責めたか解らない。  だが、どんなに自分を責めても、謝罪してももう、彼はこの腕には二度と帰って来ないだろう。  それでも。  「・・・俺は未だ、お前を諦め切れないんだ・・・・・」  
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