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「にいちゃ!遊んで!」
「……」
まただ。うるさいだけのガキが俺の前に現れたのだ。なんなんだよ、このクソガキはっ!
俺の居場所に許可無く割り込みやがって。
座り込んだ俺よりも目線が低い、酷く小さな生命体も退く気はないとみた。
「あっち行け。俺は今忙しいんだよ、ガキ」
「にいちゃ、座ってる 」
「おう」
「それだけ」
「うっせえな。大人のやることに口出しすんなよガキのくせして。てめえ親は?」
「おや?」
「親父とお袋の事だって」
「おあじ?おうくろ?」
「あー!!クッソ!!てめぇのパパとママはどこだって言ってんだよ!」
普通に会話もできねえのかよ、ガキってのは。
苛立ちがたまって仕方がない。
「はなちゃね、パパとママいないの 」
「あ?いない?」
「うん、遠くに行っちゃったんだって……会えないと」
それだけ聞いて内心「なるほど」と納得した。
そう聞くと、もう両親は両方亡くなっていることを想像してしまうが、おそらくそうだと思う。
どういう経緯でそうなったかは興味もないが、こいつのために真実はきっと周りの大人たちによって付せられているんだろう。
その日「はな」と名乗ったガキは俺が帰るまでずっとお隣を離れずにいた。
それから、そいつは毎日俺のところへやってきてはどこに行くにも俺から片時も離れず付き纏ってきた。コンビニ、銀行、イヤホンを買うために訪れた電気屋などにもついてこられて、まるでこれでは俺がこいつの親ではないか。勘弁してほしい。
まったく、妙な奴に好かれたもんだ。
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