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「にいちゃ、お友達は?」
「あ?いねぇよ。んなもん」
「さびしくないの……?」
「ないね。友達なんて邪魔なだけだ」
「はなちゃは……じゃま……?」
「えっ……」
今まで円滑に進めていた会話の投げ合いの中で唯一返答に困った質問だった。
確かに今の俺達の関係を何だと表すと、他人でもなければ知り合いという距離感でもない。
となると一番「友達」という関係が当てはまるか。
その関係を否定するようなことを言われれば不安になって当然かもしれない。
それに俺が返答に困った理由は、それだけでなく、もう一つある。
それはこいつがあまりにも子犬のような目で俺を見るからだった。その瞳には「捨てないで」と書いてあるような。
「さぁな」
返答に困った挙句、そんな有耶無耶な答えを返すしかなかった。
俺にも遠い昔一人だけ友達がいたことがある。
だが、そいつは事故である日突然死んだ。
友達という存在に依存しすぎたが故に苦しみも倍増した。だったらもう作らないと決めたのだ。
あんな思いはもうしたくないと。
「俺にもな大事な奴がいたんだ。だけど、事故で死んだ。だからもう友達は作らねぇって決めてんだ。ってお前に言ってもわかんねぇか、まだ」
なぜ柄にも似合わず感傷的になってんだ俺は。馬鹿か。まあ、幸いガキは話が通じないことが多いし、助かる……と思った時、隣で大人しく座っていたガキがシクシクと泣き出した。
「っておい!?なんで泣いてんだよ!?」
やはりさっきのあの言葉が良くなかったのか?
泣き出す原因が分からず、肩を掴む勢いで叫ぶと震える声で少女は言った。
「じこ……?じゃあ……パパとママも……」
泣き出した原因が分かったのは、少しずつ理由を聞き出して数時間後のことだった。
どうやら周りの大人から、両親は事故に遭って遠くに行ったと聞かされていたらしく、それが「死」に直結していたとは思っていなかったと言う。
言葉を濁した大人の優しさが、反対にこいつには深く突き刺さったみたいだ。
そんな奴にかける言葉も見つからず
「ほら、来いよ。ガキなんだから大泣きしろ。ガキらしく。胸くらい貸してやるよ」
と慰めでもなければ励ましでもない言葉を言って腕を広げると糸が切れたように小さな生命体は俺の中に飛び込んで泣き喚いた。
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