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「にいちゃの名前教えて欲しい!それとはなの名前呼んで!それから……」
「待て待て、一つじゃねぇのかよ」
「一つだけなの? 」
「……まぁ、別にいいけどよ」
「やった……!」
先に述べた二つの願いを叶えてやるべく「いいか」と口火を切った。
「これの名前は海(かい)だ」
「かい!!かいにいちゃ!!」
「そうだ。もう教えてやらねぇからな。ちゃんと覚えてろよ」
握り飯を送ったからか、すっかり元気を取り戻したそいつは続けて胡座をかく俺の膝の上に乗り出している。
「ねぇ!!かいにいちゃ!!はなの名前呼んで!!」
「……」
「ねぇー!!かいにいちゃ!!負けたのかいにいちゃなの!!」
「分かった、分かった!!分かったから騒ぐな、はな!ほら!これでいいだろ」
「えへへ!もっかい!!」
「はぁ?!もういいだろ!」
「やっ!!ねー!!もっかい!!呼んで!!」
「あー!!もう!!はな!!は!!な!!」
「わーい!!!」
こうして振り回されることも少なくないが、久しぶりに目を輝かせて喜ぶはなに対し、悪い気はしなかった。
だけど、照れくさくて居心地が悪くなり、頭を乱暴に掻きむしったけど。
「んで?願いはそれで終いか?」
「う〜ん……あとは……」
「何だ?言ってみろ」
「でも……」
「何だよ。言わねぇと損するぞ?こんな機会またとねぇ」
囃し立ててやるとはなはさっきまでの勢いをしまいこみ、俺の服を掴んでいった。あの日のように。
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