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再会と想い
しかし、その翌日からの3日間はなは俺のところへ訪れなかった。俺とおばさんを天秤にかけて、やはりあっちを取ったか。まあ、妥当な判断だろうが。
だが、そう思う反面、心なしか内心どこかで似つかわしくない「寂しさ」を抱き始めた。
その上、あいつが心配で仕方なく落ち着かなかった。あいつの口から家に関するいい話を聞いた覚えがない。
そして3日の時が過ぎた4日目の夕方。
そいつは突然現れた。ひどく痩せこけ真冬だというのに、薄い半袖シャツ一枚の上に痣を腕と足だけでなく、顔にもつけて。
「かい……にい……ちゃ……」
定位置から見える視線の先、フラフラと頼りない足取りで歩いてくるあいつが見えた。
雪川人の波に流されまいと、足を引きずり必死に俺の下までたどり着こうと進むはなの姿が。
しかし、残り数メートルというところで力尽きはなはその場に倒れ込んだ。
「はな……!!」
飛び出すように駆け寄るが、人の波が邪魔でなかなかたどり着けない。今日ほど人ごみを憎んだことはなかった。倒れ込んだはなを見て、足を止める人も返って邪魔だ。
「退け……!退けよ……!!」
人を押しのけやっとはなの元まで辿り着くとすぐにはなを抱き抱え、例の場所まで運ぶ。
「はな……!!一体何してたんだよ!?どうしたんだこのひでぇ傷は!」
明らかに今までとは比較にならないほどの痣だ。
所々火傷のような跡も人工的に付けられたような切り傷もあるし、無残な姿だ。
「かい……にいちゃと……いっしょに……居たかった……から…」
水もろくに飲んでいないのか、ゼェゼェとひどく咳き込むはなに水をやる。
「もしかして……俺と居たくて、俺の言ったことをやったのか……?それでおばさんに逆らったのか……?」
「う……ん……。話しても殴られて……聞いてくれなかったから……逃げてきたの……。部屋に閉じ込められて……ご飯もなくて……まっくらで……」
「……ッ」
馬鹿……野郎……。
俺なんかと一緒に居たいがためにこんな傷だらけになってまで反抗してここまで独りでやってきただなんて信じられない。
「なんで……!!何でだよ……!!お前にとっておばさんが全てじゃなかったのかよ……!!逆らうのが怖かったんじゃなかったのかよ……!!こんな俺の……せいで……」
俺のせいで、負ってしまった傷を思うと胸が締め付けられずにはいられなかった。
ある意味で俺がはなに傷を負わせ傷つけてしまったと。そんな俺にはなは「かいにいちゃ」といつもの調子で呼びかけた。
「……だい……すき……なの……」
「……!」
「はなは……にいちゃ……すき……なんだよ」
「……はなっ」
「だから……泣かないで」
「え……」
はなが俺の胸の中で花が咲くように笑、俺の涙を拭って頬にキスをした。
「……!?」
「だいじょうぶ……。はなはね、にいちゃが大事な人って気づいた……。正しいと思う事……したんだよ」
「あぁ……。そうだな……偉いぞ」
はなも俺の涙につられて笑いながら涙を流す。
「お前も泣くんじゃねぇよ……」
「へへっ」
もう我慢の限界だった。力なく笑うはなをこれ以上苦しめたくない。その思いだけが湧き上がる。
自分の性とかを気にする余裕もなく、力いっぱい抱きしめる。失くしいたそれはもう手放さないというように。
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