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「かいにい……ちゃ……?」
こいつは俺のためにこんな目に遭った。
それは語ってもらわずとも良いほどに痛々しい傷や痣が辛酸な思いを訴えている。
もう十分すぎるくらい苦しみ続けたんだ。
「よく……頑張ったな。もう平気だからな」
このままはなが勇気ある行動を取らなければ、きっと殺されていただろう。それだけはなんとしても避けなければ。
遠い昔に亡くした友に抱いた感情のように、自分の心には確かにはなに対して「情」が生まれていた。
あの時は何も出来ず、突然それを失ったが、今度はそうはさせねぇ。
そう思った時、遠くから1人の中年女性が近づいてきて「すみません、うちの子が」と俺たちに話しかけた。
「おば……さん……」
恐怖から震えるはなを「大丈夫だ」としっかり抱きしめる。
「うちの子が迷惑をかけたようで……」
見た目も話し方も何一つ変なところはなく至って正常な人間にしか見えない。
ただ、はなの激しい震えだけが確かに全てを物語っている。ここではなを手放せば今度こそ、こいつがどんな目に遭うか想像したくもない。
比較的綺麗な身なりであるところを見ると、遠い昔に「悪人は見た目に出さない」と言う教えを聞いたのを思い出した。見た目に出さず隠すから、悪人なんだと。俺はその女に「迷惑?」と睨みつける。
「俺はアンタに感動の再会をこうして邪魔される方が迷惑だけど?」
「え……なんですって?」
「聞こえなかったのかババア。迷惑なんだよ!こいつは俺が引き取る。だから、失せやがれ」
「なっ……!」
「かいにいちゃ……?」
動揺する女の視線を弾き返すように睨みつけて続ける。
「はなの痛みも苦しみも何も分かろうとしねぇ、アンタにこいつは渡さねぇ、子供を物としてしか見てねぇだろ」
「あなたの何がわかるの!?この子に変な吹き込まないで!」
「どの口がほざいてやがる!捻くれた大人の事情を押し付けて、こいつをこんな目に遭わせたのは、てめえだろ!」
言い合いがヒートアップしていく。
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