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3.狐乃音のお風呂タイム
ちゃぷんっと、水音が響く。
辺り一面、真っ白な湯気。その中に、狐乃音はいた。
「ふ~」
幸せなため息が出る。ぽかぽかと暖かくて、身も心もとろけそう。
ここはお風呂。
タイルなど、ちょっと昭和の雰囲気が漂うレトロな作り。だけど、とっても広くて、銭湯のように大きな浴槽があるのだった。
「お風呂は気持ちいいのです~」
狐乃音はお風呂が大好きだった。気持ちいいし、それになにより楽しいから。
「ちゃんと洗います」
ボリュームたっぷりな、ふさふさの狐尻尾を自分で掴んで、ボディーソープを塗り込んで、ごしゅごしゅ洗った。
「あは。私の尻尾、何だかスポンジみたいです」
水に濡れてぺっちょりとしてしまったけれど、もしゃもしゃと泡立っていく様が楽しい。
「頭も洗います~」
普段は和紐で結び、ポニーテールにしている長い髪も解いて、シャンプーで泡立てていく。
最初の頃は、シャンプーが目に入ってしまい、大慌てをしたものだけど、今ではすっかり慣れていた。
「うきゅ~。幸せなのです~」
白くてほっそりした体の隅々を洗ってから、ざぶざぶとお湯で流す。そうして湯船に浸かる。たっぷりのお湯はまるで、海のようだ。
極楽とは、このことなのでしょうかと、狐乃音は思う。
と同時に、このような幸せな思いをさせてもらってることに、狐乃音は心から感謝するのだった。
狐乃音は率先して、お兄さんのお手伝いをした。
掃除や洗濯。お茶くみから洗い物。
お風呂だって、毎日一生懸命お掃除してる。
ただ、なにもしない居候になるのは、嫌だったから。
そんな狐乃音をお兄さんは、無理はしないでねと、優しく頭を撫でてくれた。
「……海って。お風呂みたいに、ちゃぷちゃぷしているものなのでしょうか?」
おもちゃのお舟がぷかぷか浮かんでるのを見て、狐乃音はふと、そう思った。
「海~」
明日、お兄さんが連れて行ってくれるのだ。待ち遠しい。
「楽しみなのです~」
いったいどんなところなのか。わくわくしてたまらない。
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