5人が本棚に入れています
本棚に追加
5.上には上がいやがった!
「どわあっ!」
「おわっ!」
ガガガガッと、つんざくような物音!
至近距離で落雷でもあったかのように、すさまじい物音がして、条は思わず軽トラのブレーキをかけていた。
「な、なんだあっ!?」
「なんすか一体っ!?」
目を疑うような光景。
自分達が今まさに狙おうとしていた自販機が、バカでかい重機によって持ち上げられ、そのまま持ち去られようとしていたのだ。それも、数台を一気にまとめて。豪快に。
つまりは、ケチな自分達を遥かに上回る先客がいた、ということだ。
「クソ野郎が! んな、いきなり何台も持っていこうとするんじゃねえよ! 一台ずつにしろよ! 一日一台にしろよ! 全然奥ゆかしくねえぞ!」
「兄貴! こそ泥に奥ゆかしさもなんもないっすよ!」
「うるせえ!」
条は、頭に来ていた。
悪事を働くにしても、もう少し規模というのか、少しずつ拝借するべきであろうというのが、彼の持論だった。
イキナリど派手にやったら目立って、警察も真剣に捜査をすることだろう。それはまずいだろうにと思った。
故に、根こそぎ持っていこうとしている奴等は許せない。
「絶対に許さんぞ! 落とし前をつけてくれる!」
「ど、どうするんっすか!?」
「決まってんだろ! これから、奴等の後をこっそりつけるんだよ! バレねぇようになっ!」
重機によって持ち上げられた自販機は、そのまま重機ごとトレーラーの上へと載せられていった。
「ムカついたから通報してやる。おい千秋! ナンバーしっかりメモっとけよ! 車種もだ!」
「了解っす!」
やがて、窃盗団は目的を果たしたのか、移動を始めた。
「いくぞ!」
条の運転するトラックがゆっくりと、トレーラーの後をつけていく。怪しまれないようにと注意しながら。
最初のコメントを投稿しよう!