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1.金がない!
それは、今から少しばかり未来の話。
「兄貴! 金がないっすよ!」
一目で、おんぼろだとわかるアパート。
広さはそれなりだが、壁がつぎはぎだらけの一室にて、小柄で小太りな男が、何やら喚き散らしていた。
床に布団を敷き、寝転がっている男に向かって。
「ぐご~」
「起きてくださいっすよ兄貴!」
その布団の中で眠っている男。……兄貴と呼ばれた、ひょろりとした長身の男は、鬱陶しそうに応じる。
「あぁん? そんなんいつものことだろが。いちいちでけえ声だすんじゃねえってんだよ」
「それどころじゃないんすよ! このままいくと、来月の家賃すら払えねっす! 兄貴! 真面目に聞いてくださいっすよ!」
「お、おぉ、おぉぉ!」
小柄な男は慌てたように、ゆさゆさと、兄貴の体を揺さぶる。
「う、うるせーーー! 今さら何言ってやがんでぇ馬鹿野郎! いつもの通り、日雇いで稼げゃええんやタコ!」
「だから、その仕事がないんすってばっ!」
「は? 何寝ぼけたこと言ってんだ」
「寝ぼけていねえっす! 日雇いの仕事すら取り合いになっちまってるんすよ!」
仕事がない。
その一言は、かなりのインパクトを、兄貴と呼ばれている男に与えたようだ。
「例のウィルス騒ぎのおかげで、仕事が全然ないっていってるんっすよ! 世の中、いつの間にかやばいくらいの大不況になってるんすよ!」
「な、なんだって~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
いきなり財政がクライシス! さあどうする!?
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