事故

2/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「兄ちゃん、大丈夫かい?」  窓が開いて、髭面の顔が飛び出してきた。よれよれのポロシャツ姿で恰幅のいい、いかにも地元の人といった風情の、人が好さそうなおっさんだ。  おっさんは、車を見て顔をしかめた。 「こいつは酷いな。近くまで乗せてってやるよ」  これで助かった。ほっと胸をなで下ろし、礼を言って、助手席に乗り込んだ。確かこの少し先に小さな食堂があるはずだ。取りあえず、そこで降ろして貰って、電話を借りて、誰かに迎えに来て貰おう、そう思っていたのだが……  食堂はなくなっていた。潰れたんだろうか?確かにあまり繁盛してはなさそうだったが。正月に来たときには、まだあったはずだ。仕方なく、その先のコンビニまで行くことにした。  だが、何てことだろう。コンビニもなくなっていた。食堂と同じで、跡形もない。不景気のせいだろうか?全くついてない。  さて、どうしたものか、と頭を抱えていると、おっさんが声をかけてきた。 「村まで乗せてってやるよ。あそこならバスも出てるし、何とかなるだろう」  ありがたく、好意に甘えることにした。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!