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「ここだよ」
そう言って、おじさんはガラガラと入口の引き戸を開けた。奥にカウンターがある他は殺風景なものだった。年寄りが四、五人いて、花束や果物籠、菓子おりを抱えて、順番を待っていた。
カウンターには、男が一人座っていた。白いワイシャツに両袖に黒の腕カバー、見るからに事務職といった服装だ。髪はやや薄く、片メガネを付けていた。
男はカウンターに載せられた品を、骨董品を扱うように、手にとって注意深く眺めては、「これは千円、これは三千円……」と値ぶみして、終わるとカウンター後ろカーテンの向こうに渡していた。
値段は、まちまちで正直何が基準か、さっぱり分からない。それに、品物はほとんど生ものだ。一体、買い取ってどうしようと言うのか見当もつかなかい。
他の人たちと同じように、おじさんの後に並んだ。間もなく順番が来た。カウンターにライターを置くと、係の男は怪訝な表情を浮かべて、こちらを見た。
「誰から貰ったんだい?」
「自分のです」
「これだけかい?」
「はい」
「ふうん」
男は目を細めた。
「まあ、いいだろう」
それから、ライターを裏表ひっくり返し、ひと通り捻り回して確認した後、言った。
「五百円だね」
一枚の札が差し出された。青っぽい色合いで、見慣れない人物が印刷されている。
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