交換所

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 何だ、これ?  見たこともない紙幣を渡されて、あわてて、窓口の男に詰め寄る。 「すみません、何ですかこれ?」 「何ですかって、お金だよ。五百円札だよ」  五百円札だなんて、そんな馬鹿な。   男の視線は冷ややかだった。 「少ないなんて、文句を言っても駄目だよ、それは五百円だ。はい、次の人」 「あんた、とっとと、退()いてくれないか。」  後ろから押されて、有無(うむ)を言わさず列から弾き出された。愕然(がくぜん)としていると、ポンポンと肩を叩かれた。さっきのおじさんだった。 「まあ、こればかりは、どうしようもないよ。でも、それだけあればバスには乗れるよ」  おじさんは慰めるように言って、バス停まで戻ろうと(うなが)した。  いや、そういうことではない。  小さな違和感が、頭の隅をちくちくと突つき出した。思い返せば、今までのことはどこか不自然だ。始めから何かがおかしかった。 「急がないと乗り遅れるよ」  おじさんが言った。  ともあれ、ここに居てもどうにもならない。釈然(しゃくぜん)としないまま、交換所を後にした。  まずは、この村を出ることだ。
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