4人が本棚に入れています
本棚に追加
何だ、これ?
見たこともない紙幣を渡されて、あわてて、窓口の男に詰め寄る。
「すみません、何ですかこれ?」
「何ですかって、お金だよ。五百円札だよ」
五百円札だなんて、そんな馬鹿な。
男の視線は冷ややかだった。
「少ないなんて、文句を言っても駄目だよ、それは五百円だ。はい、次の人」
「あんた、とっとと、退いてくれないか。」
後ろから押されて、有無を言わさず列から弾き出された。愕然としていると、ポンポンと肩を叩かれた。さっきのおじさんだった。
「まあ、こればかりは、どうしようもないよ。でも、それだけあればバスには乗れるよ」
おじさんは慰めるように言って、バス停まで戻ろうと促した。
いや、そういうことではない。
小さな違和感が、頭の隅をちくちくと突つき出した。思い返せば、今までのことはどこか不自然だ。始めから何かがおかしかった。
「急がないと乗り遅れるよ」
おじさんが言った。
ともあれ、ここに居てもどうにもならない。釈然としないまま、交換所を後にした。
まずは、この村を出ることだ。
最初のコメントを投稿しよう!