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「だーってぇ、妙じゃありませんか? 話を聞いた限りでは、そいつらは魔獣を操るって話ですよ? そんな技術、大陸で聞いたこともありません」
「まあ、確かにな」
アリアの最もな疑問に、レミルは腕を組んで頷く。そこでチラリと横目でマテルナの事を見やるが、彼女は昨日と同じくどこか心ここにあらずと言った感じで、ぼんやりと中空を眺めていた。何か気がかりなことがあるのか、とレミルは声をかけてみる。
「あんたはどう思う? マテルナさん」
「……え?」
不意に話を振られて、マテルナは思わず聞き返した。それから、何かを振り払うように首を振り、動揺した様子で答える。
「あ、ああ、そうですね。……すみません、よく分からないです、村の外のことは」
「村の外のこと……ですか?」
「はい。魔獣がどうとか、山賊がどうとか、いまいちピンと来ないんです。村が大変なのは分かるんですけど、村から出たことがないので……」
「なーるほど、つまり世間知らずってわけね」
「ちょっと、言い方をどうにかしなさい」
すかさず歯に衣着せぬ物言いをするレミルを窘めるアリア。それに対して、マテルナは首を振って。
「ううん、いいんです。レミルさんの言う通りですよ」
そう言うと、木々の隙間から覗く青空を見上げて続けた。
「クロコールの村は、すごく閉鎖的なんです。外との関わりはあまり持たないし、人数も限られてて、村人が外に出ることにも億劫で、良い顔はしません」
「保守的、ということですか?」
「言ってしまえばそうですね。別に外の人間を拒んでいるわけではないんですが、そもそも旅人の方なんかもあまり来ませんし、村の若者の数も限られてて……特に女性は、外の世界に出ていくことなんて許されません」
「へえ、今どき珍しい」
他人事のように感想を述べるレミルに、マテルナは苦笑する。
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