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「外から来た冒険者さんから見たらそう映るかもしれませんね。でも、この村ではずっと、それが普通だったんです。そんな風習が当たり前に続いてた」
「言われてみれば、いくらデルクラシアの外れにあるとは言え、あまりにも情報の少ない村でしたしね。公道からも随分外れていましたし、パンネッタさんがいなければ私たちがやってくることもなかったでしょう」
「ええ。ここから一番近くの街にだって、出稼ぎに向かう男の人が、数年に一度、出るかどうかという程度で……だから、村の外からルギフの一味がやって来た時も、本当に途方もなくて」
かつてのことを思い出しながら、マテルナは目を細めた。
「現実味がありませんでした。私たちには未知のものだったので、彼らがどれくらい危険な存在なのかもよく分からず……ただ、村が危ないということだけが分かって、それで……」
「大人しくそいつらに従うことにしたってか?」
「……はい。最初は抵抗もしたんですが、一味が操る魔獣の力は恐ろしくて。それに、あの方。偶然、村の外からやって来たストアさんという方が詳しく説明してくれて。それで私たちも一味の恐ろしさを理解したんです」
「あいつ、か」
レミルは、村にいた長身の白衣姿の男を思い浮かべる。個人的には何となく、あまりいけ好かない雰囲気だったので、会話はほとんどしないように務めていたのだが。あの男、魔導研究施設の職員だなどというお誂え向きの男が、村の襲撃に際して居合わせたのは本当に偶然だろうか、とレミルには疑問だった。
「ストアさんの助言に従って、ひとまず大人しく彼らの言い分を聞くことにしたんです。そうしたら……」
「連中の要求は、マテルナさん含む村娘の身柄だったんですよね?」
「……はい、そうです」
そこでマテルナは拳を握りしめ、唇を噛んだ。当然といえば当然だが、やはりどこか思うところがあるようだ。
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