クロコールの村

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「最初はみんな、断固反対しました。例え村の安全がかかっているとはいえ、若い子たちの身を危険に晒すなんて、と」 「まあ、当然の流れだな」 「でも結局、彼らには逆らえなかったんです。最終的には大人しく、要求を飲まざるを得なくなって……」 「ふうむ、しかし……」  そこで、アリアが顎に手をやり、考え込む。レミルには、どことなくその仕草と口調は、リアスを真似ているように見えた。それだけ慕っているということだろうか。 「当事者であるマテルナさん達……つまり、村の若い女性達は反抗しなかったんですか?」 「えっ?」  マテルナが短く漏らす。それに対して、アリアは人差し指を立てて、最もらしく続けた。 「どこから来たかも分からない、恐ろしい魔獣を連れた山賊に自分たちの身柄を引き渡されるなんて、そんな不気味なことはないでしょう? 例え村がそう決めたとしても、本人たちは納得は出来ないと思いますが」 「だって、相手は大の男がかかっても敵わないような生き物を操っているんですよ? 逆らえるわけないじゃないですか!」  突然、たがが外れたかのように早口でまくし立てはじめるマテルナ。ずいっとアリアの方に身を乗り出し、気分を害したというよりはどこか必死な、追い詰められているような面持ちで、感情に任せて言葉を並べ立てる。その様子に気圧されて、アリアは思わず怯みながら一歩後ずさった。 「この村には、あの一味に対抗出来る手立てなんてない、それくらい分かります! それに……もしどこかに助けを求めに出て、それが一味の耳に届いたりでもすれば、大変な事になります! 見たでしょう? パンが私を助けようとしたばかりに、あんなことが……」 「え、ええ、それはまあ」 「かと言って、外の世界との関わりのないこの村に、どこかから助けが来る希望なんてないに等しかった! どうしようもなかったんです。ストアさんも打つ手がないと。それで、彼らの要求に従うしかないって……」 「まあ待てって、近いぞ」  そこで、レミルが高ぶったマテルナの肩を叩き、制止にかかる。 「っ!」
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