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「あんたさっき、慌ててそんなこと言ってたよな。結局、それが本音だったんじゃないか?」
「……た、確かにそうですがっ」
アリアは一度意外そうに、的を得たような台詞を口にするレミルの方に目をやってから、改めてマテルナに視線を戻した。
「レミルさんの言う通りだと思います。詰まるところ、あなた達はやはり、自分でその道を選んだわけではない。他にどうしようもないというこの状況で、自分だけが犠牲になることの無いように、カナさんの残した「絆」という言葉にみんなで縛られることを選んだ」
「……」
「逃げ場のない絶望の中で、自分に言い聞かせていたんです。これは皆で選びとった道だと……カナさんとの「絆」なんだと。そして平等に、誰もがその道を選ぶようにと」
「そ、それは……」
マテルナは項垂れて、喉を震わせる。それはほとんど、アリアの言葉を肯定しているととれる反応だった。
「……マテルナさん、違うんですよ。カナさんの存在に縛られる必要はありません。あなたは助かっていいんです」
「……っ!」
アリアがそう言いながら、魔法指輪をたくさんはめた小さな掌でマテルナの手を包み込むように掴むと、マテルナは今まで張り巡らせていた虚勢が弾けたように表情を緩め、そして膝を震わせてその場に尻餅をついた。思わず力が抜けてしまったのかその瞳にはうっすらと涙すら滲んでいた。
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