クロコールの村

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 そんなマテルナにアリアは慌てて寄り添う。レミルも無言で肩を貸すために身を屈ませた。 「だ、大丈夫ですか? すみません、勝手にペラペラと……少し休みますか?」  そう提案すると、マテルナは力なく首を振り、レミルの肩に掴まる。 「いえ、すみません。……それと、ありがとう」  それから気恥しそうに、目元を拭うと、今度は健気に笑った。 「私……ずっと、その言葉を待っていたのかも」 「え?」  アリアはキョトンと、マテルナの言葉に首を傾げた。それに対してマテルナは、胸に手を当てて静かに続ける。 「ほんと、怖いくらい自分の気持ちを言い当てられてビックリしちゃった。私、本当はずっと怖くて、嫌でした」  そして胸に当てた手をギュッと握ると、今度はしかめっ面になって。 「だって、こんな狭くて何もない村で。何も知らない小娘のまま、女の子一人助けることも出来ない村のために危険な目に遭うなんて、本当は納得できません! そう思いませんか?」  言下に、ずいっとアリアに向かって身を乗り出し、同意を求めてくるマテルナ。なんだか急に印象が変わったような気がするが、もしかしたらこっちの方が本来の彼女の気性なのかもしれない、とレミルは思う。アリアも戸惑いながらも彼女の言葉に頷いた。 「は、はあ、まあそうですよね、普通」 「私、本当はいつか、村の外に出ていくのが夢だったんです。……まあ、それはダメなんですけど。だから、本当を言うと、村の外から来たっていう山賊の一味に最初、ほんのちょっとだけ興奮してました」 「「こ、興奮!?」」  アリアとレミルが同時に声を上げる。なかなかお転婆なもの言いに、思わずと言った感じだったが、マテルナの方はその反応をされて、流石に頬を赤らめた。 「あ、あの、ほんと最初だけですよ? は、初めて見たものでしたから」
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