耳とナイフと怪物と

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「アリア! マテルナさんについていてくれ!」  そこに、体制を低くして身構え、戦闘態勢に入ったレミルが背中を向けて言ってくる。アリアは彼の言葉に頷きつつも、自身もメイスを構えて、真剣な声音で答えた。 「分かりました。ですが気をつけて下さい。今までの敵と比べて、少し厄介ですよ」 「知ってるのか、このバケモン」 「ええ。恐らくこの魔獣は「フンババ」。ギルドの公表ではランクBに位置する、いわゆる「上級魔獣」の一種です」  上級魔獣、その定義はギルドの定める危険度ランクA~Cに当てはまり、手練の戦士や軍の兵士であろうとも、その討伐には中隊規模の人数を要すると推定されるほどの頑強さと獰猛さを持つ魔獣の総称である。  彼らの多くは、火山や洞窟の奥部など、人間のほとんど寄り付かない地域に発生する事が多く、専用の討伐依頼がギルドから下されることが多い。何故なら、もしこれらの魔獣が人里に降りてくるような事があれば、その被害は一大都市をも脅かすものになりかねないほどだからだ。 「なるほど、そいつは厄介そうだな」 「しかし、これほどの魔獣がなぜこんな所に? まさか、これも山賊の一味の仕業……?」  だとすれば、にわかには信じ難い話であった。意思を交わすどころか、その討伐にすら大陸中が手を焼いている程の魔獣を使役する人間がいる、だなどと。これまでの常識を根本から覆す事実である。 「とにかく、適宜私も援護します。レミルさんも油断しないでください」 「おうとも、気を抜かずにやるさ」
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