序章

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序章

かつて、大陸の果ての奈落の大穴「嘆き落とし」の底より這い出た闇が空を覆い隠した、遠い昔のこと。 「星明かりの神」が生まれたばかりの一人の赤子に光の祝福を授けた。溢れんばかりの栄光と誉れの中で生まれたその赤子は、大陸中の期待を背負って育ち、やがていつしか「勇者」と呼ばれるようになった。 気高い志と、揺るぎない慈愛とを兼ね備え、神の祝福によって光の力を授かった勇者は、十五の歳の誕生日に、与えられた使命を胸に永らく天に被さる闇を払わんと、最果ての山脈を目指して一人旅立った。 過酷な旅路の途中で、時に傷つき、そして時にはかけがえのない仲間と出会い、その旅はおよそ二年続いた。想像を絶するほどの苦難な悲しみもあったが、しかしどんな悲劇も難局も、勇者を挫けさせることはなかった。 長い旅の果て、途方もないほどの道のりを乗り越え、彼らはついに闇の渦の中心へとたどり着いたのだ。やがて潰えし大陸の勇者伝説の軌跡が、必ずやこの世界の闇を晴らし、平和をもたらすことを信じて……。  ー大陸に僅かに遺る勇者の叙事詩『アルゴ英雄記』よりー
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